インプラントは保険適用できる?条件や費用負担を少なくする方法を解説
インプラントは歯科治療の中でも高額な費用がかかる治療のため「健康保険は適用されないの?」「安く済む方法は?」など、費用について悩む方も多いでしょう。実は、2012年4月から一部の症例に対しインプラントも保険適用になりました。ただし、保険が適用されるには条件を満たしている医療機関での受診が必要など細かな決まりがあるため、先ずは「自分が保険適用の症例に含まれているのか」を確認しましょう。
この記事では、インプラント治療で保険適用が認められる症例や条件について詳しく解説するとともに、保険適用されないときの費用負担を少なくする方法についてもご紹介します。
インプラント治療は原則として保険適用外
「インプラントが保険適用される治療なら受けたい」と考えている方も多いでしょう。インプラントは一部の症例に対し保険適用になったものの、原則として「保険適用外」です。インプラントが保険適用されない理由と、インプラントの治療費が高額になる主な理由には、下記の4つが挙げられます。
- 見た目や機能性の重視という側面が強いため
- 日常生活には入れ歯やブリッジなどで十分と考えられているため
- 器具・器材や人件費がそもそも高額なため
- 自由診療と保険診療の違い
インプラントの保険適用は一部の症例のみになるため、ほとんどの方が保険適用になりません。先ずは、なぜ保険適用にならないのか理由を見ていきましょう。
理由①見た目や機能性の重視という側面が強いため
インプラント治療が保険適用外になる主な理由は、見た目や機能性を重視した治療だからです。失った歯の治療には入れ歯やブリッジがありますが、見た目や機能性はインプラントに怠るため、審美性を求めてインプラントを検討するといった方が多いのが現状。審美性を求める歯科治療は基本的に保険適用外となるため、審美性の強いインプラント治療も含まれます。
審美性を求める他の歯科治療には、歯を白くするホワイトニングや歯並びを整える矯正治療、むし歯治療で被せ物をするときの素材を見た目が綺麗に見えるセラミックを使用するなどがあります。このように、審美性の強い歯科治療はインプラントも含めて保険が適用されません。
理由②日常生活には入れ歯やブリッジなどで十分と考えられているため
インプラント治療が保険適用外になる理由には、失った歯の治療は入れ歯やブリッジなどで十分と考えられているからです。一方、入れ歯やブリッジは、審美性よりも「咀嚼機能を回復して健康な体つくりをする」といった健康を重視した歯科治療であるため、保険適用の対象となっています。
ただし、保険が適用されるのは素材が安価なものに限られており、セラミックなどを使用した入れ歯やブリッジは審美性を重視した歯科治療になるため保険適用外となります。
理由③器具・器材や人件費がそもそも高額なため
インプラントが高額な理由は、インプラント治療を的確に行うために精密な検査ができる歯科用CTなど、様々な医療機器の導入、衛生管理が徹底されたオペ室の完備など、設備の購入や維持に費用がかかるためです。その他にも、歯科医師の技術力や知識向上のための研修費、インプラント専門医を雇っている場合は高額な人件費が必要になります。
インプラント治療は高度な技術や医療機器が必要になるため、治療費はどうしても高額になるといった状況です。
理由④自由診療と保険診療の違い
自由診療と保険診療の違いは、簡単にお伝えすると「見た目を良くする治療と病気を治す治療」です。例えば、綺麗な白い歯にしたいなど見た目を良くする治療は自由診療となり、むし歯や歯周病などの治療は病気に含まれるので保険診療となります。
自由診療と保険診療では、患者の自己負担額に大きな違いがあります。自由診療の場合、治療費の全額を患者が負担しますが、保険診療では年齢によって異なるものの、基本的に3割の負担で済みます。
例えば、治療費が10,000円の場合を考えてみましょう。自由診療では10,000円全額を支払う必要がありますが、保険診療ならわずか3,000円で済みます。
この大きな金額の差が、インプラント治療にも保険適用を求める声の背景にあります。多くの人々が、より手頃な費用でインプラント治療を受けられるようになることを望んでいるのです。
インプラント治療で保険適用が認められるケース
原則インプラントは保険適用外とお伝えしましたが、厚生労働省から2012年4月に一部の症例に対しインプラント治療の保険適用が認められるようになりました。インプラント治療で保険適用が認められるケースは、下記の3つです。
- 先天性の疾患の治療が目的であること
- 事故や病気など後天的な理由による治療であること
- 条件を満たす医療施設で治療を受けること
インプラントで保険が適用されるにはかなり限定されたケースとなっており、受診する医療機関も限られています。
先天性の疾患の治療が目的であること
インプラント治療で保険適用が認められるケースは、「先天性の疾患が原因で顎の骨が3分の1以上欠けている、もしくは顎の骨が形成不全の状態」の2通りです。顎の骨がないと入れ歯やブリッジでの治療が難しいといった理由から、厚生労働省が保険適用でのインプラント治療を認めました。
先天性の疾患であるという判断は歯科医師の診断が必要になるため、歯がない原因が先天性の可能性が高い方は歯科医院で診てもらいましょう。
事故や病気など後天的な理由による治療であること
「事故や病気で広範囲にわたり顎の骨が欠けてしまった」という場合も、インプラント治療で保険適用が認められます。保険適用が認められる理由は先天性の疾患と同じで、顎の骨がないと入れ歯やブリッジでの治療が難しいからです。
保険が適用されるかどうかの判断はやはり歯科医師の診断によりますので、事故や病気で顎の骨を無くしてしまった方は保険適用でインプラント治療ができるか歯科医院に相談してみましょう。
条件を満たす医療施設で治療を受けること
インプラント治療で保険適用が認められるケースについて解説しましたが、それ以外に条件を満たす医療施設でインプラント治療を受けなければ保険適用になりません。
保険診療でインプラント治療を受けられる医療施設の条件には入院用のベッドが20個以上あることと、歯科と歯科口腔外科の診療科目があるなど、かなり厳しい条件が設けられています。つまり、条件を満たせる医療施設というのは「総合病院や大学病院」など大きな病院が該当するのみで、個人経営のような一般歯科医院のほとんどが条件を満たしていない状況です。
保険診療でインプラント治療を受けるには、「大きな病院」で診てもらう必要があると覚えておきましょう。
保険適用できないインプラント治療の費用負担を少なくする方法
インプラントの保険適用に該当しなかった場合は、高額になりますが自由診療で治療をするしか方法はありません。しかし、費用負担を少なくする方法はありますので、ぜひ活用してみてください。保険適用できないインプラント治療の費用負担を少なくする方法は、下記の4つです。
- 確定申告時に医療費控除を申告
- 複数の歯科クリニックで見積もりを取って比較
- クレジットカードやデンタルローンの利用
- 高額療養費制度の利用(保険適用の場合のみ)
高額療養費制度の利用については保険適用の場合に限るため、保険適用外の方は参考程度に読み進めてみてください。
確定申告時に医療費控除を申告
インプラント治療は保険適用外ですが医療費控除の対象となるため、申告をすることで治療費の一部が還付金として戻ってくる場合があります。
還付金は所得によって異なるため一概にいくら戻るとは言えませんが、インプラント治療を自由診療で受けた場合は、医療費控除の申告をすれば多少なりとも還付されるので、治療費が戻ってくるといった感覚になれるでしょう。インプラントの治療費を医療費控除する場合は、領収書の提出が必要になるので必ず保管しておくことが大切です。
複数の歯科クリニックで見積もりを取って比較
保険適用がされないインプラント治療は自由診療となるため、歯科医院によって治療費が異なります。また、同じ見積もり金額でも費用に含まれるサービスに違いがあるため、金額だけをみて安い歯科医院に決めるのはおすすめしません。例えば、治療後のメンテナンス費込みだったりインプラントに10年保証がついていたり、一方でメンテナンス費や保証は別になっているなどです。
見積もりには何が含まれているのか項目が記載されているので、項目についても比較しましょう。しっかりと比較したうえで、少しでもお得な歯科医院を選ぶことで費用を抑える結果につながります。
クレジットカードやデンタルローンの利用
歯科医院によってはクレジットカードを取り扱っている場合があるので、インプラントの治療費をクレジットカードで払えばカード会社のポイントがもらえます。現金で払うよりもポイント還元があるので、費用の負担を抑えられるのがおすすめポイントです。
また、デンタルローンの利用も考慮してみてください。ポイント還元などはありませんが、デンタルローンを利用することで分割払いが可能になるため、高額なインプラント治療費を一括で払う必要がなくなります。多少の利息は付きますが、デンタルローンの利息は低く設定されていることが多いので、それほど負担にはなりません。一括払いが難しい方はクレジットカードのロボ払いや分割払い、デンタルローンを検討してみてください。
高額療養費制度の利用(保険適用の場合のみ)
高額療養費制度とは、1ヶ月間に支払った医療費の合計金額が一定金額を超えた部分に対して返金される制度です。高額療養費制度を利用できるのはインプラント治療が保険適応の場合のみですが、制度を利用することで費用を抑えられるので、該当する場合は申請しましょう。
高額療養費制度についての詳しい内容は、厚生労働省の公式サイトに記載がありますので、一読してみてください。
インプラントは保険適用の有無よりも治療の質が大事
インプラント治療は保険適用外のため高額となり、多くの方が費用面に注目しがちです。しかし、治療の成功には保険適用の有無よりも質の高さが重要となります。質の低い治療では、噛み合わせの悪さや持続的な痛みなどの問題を引き起こす可能性があるため、治療の質にも十分な注意を払うべきでしょう。
インプラント治療には高度な技術が要求されるため、質の高い治療を受けるには適切な歯科医院の選択が鍵となります。良質なインプラント治療を提供する歯科医院を選ぶ際は、以下の4つのポイントを基準にすることが望ましいでしょう。
- 歯科医師のインプラント治療経験が豊富か
- 治療に適した施設・設備が整っているか
- インプラント以外の治療法も提案してくれるか
- 治療に伴うリスクや費用をきちんと説明してくれるか
歯科医師のインプラント治療経験が豊富か
インプラントは口腔外科手術を含む治療のため、成功させるには経験豊富な歯科医師であるかを確認しましょう。経験が浅いと神経を傷つけたり、的確な位置にインプラントを埋入できなかったりする可能性があります。インプラントの実践的な経験が豊富な歯科医師は年間の症例数が多く、様々な症状の患者さんを治療しているので自分に合った治療を提案してくれるのもメリットです。
インプラント治療の経験が豊富な歯科医師を見つけるには、公式サイトをチェックしましょう。年間の症例数などを掲載している場合があるので、確認してみてください。
治療に適した施設・設備が整っているか
インプラントの治療をするには、精度の高い検査ができる歯科用CTや口腔内スキャナーなどの医療機器の導入は必須。また、衛生管理が徹底されたオペ室を完備しているなど、治療に適した施設や設備が整っている歯科医院であることが重要です。
インプラント治療ができる環境が整っているのかの確認をするには、やはり公式サイトをチェックするのがいいでしょう。
インプラント以外の治療法も提案してくれるか
自分がインプラントを希望していても、症状に対してインプラント治療が最も適しているとは限りません。患者さんを第一に考えている歯科医師は、適している他の治療法も提案してくれます。つまり、患者さんにとっては治療法の選択肢が増えて、その中で自分に最も合った治療法を選べるといったわけです。
費用についてもインプラントよりも抑えられることもあるでしょう。インプラントだけをおすすめする歯科医師よりも、「他の治療法もありますよ」と親切な対応をしてくれる歯科医師は信頼もできます。
治療に伴うリスクや費用をきちんと説明してくれるか
インプラントは手術も受けなければいけない治療のため、少なくともリスクは生じます。治療に伴うリスクをしっかり説明してくれる、「インフォームドコンセント」が徹底されている歯科医院を選ぶのがおすすめです。
インフォームドコンセントは、医師が患者さんに対して治療計画やリスク、費用などについてわかりやすく患者さんが納得いくまで丁寧に説明をすることを指します。また、患者さんが治療に対して納得と同意が得られてから治療を開始するといったこともインフォームドコンセントに含まれているため、「ほとんど説明もなく治療を開始された」といったことがありません。
初回のカウンセリングで、リスクや費用についてしっかりと説明があるか確認しましょう。
まとめ
インプラント治療は基本的に保険適用外ですが、先天性や事故、病気で顎の骨が3分の1以上欠損している場合は保険適用になります。保険適用に該当する方は保険診療でインプラント治療が受けられるので、先ずは本当に該当するかどうかの判断を歯科医師に診てもらうのがいいでしょう。むし歯や歯周病などで歯を失ってしまった場合のインプラント治療は審美性が目的になるので、保険適用外です。
いずれにしてもインプラントを成功させるには、歯科医院選びが重要なので、公式サイトなどを確認して初回のカウンセリングを受けてみましょう。
インプラントのおすすめ歯科医院を地域別でご紹介しているため、インプラントを検討している方はぜひ参考にしてみてください。