歯周病は口臭の原因…臭いの特徴、治療法、予防法を解説

口臭を引き起こすVSC

歯周病によって口臭が発生する主な原因は、歯周病菌がタンパク質を分解する際に産生する揮発性硫黄化合物（VSC）です。歯周病は、歯と歯茎の間にできる溝（歯周ポケット）に潜む歯周病菌が、歯茎に炎症を起こしたり、歯を支える骨（歯槽骨）を溶かしたりする病気です。

この歯周ポケット内では、歯周病菌が剥がれ落ちたお口の粘膜、食べ物の残りカス、そして炎症によって生じる血液成分などを栄養源として増殖します。この過程で、タンパク質が分解され、口臭の主成分であるVSCが発生するのです。

歯周病の進行度と口臭の強さ・種類の関係

歯周病の進行度によって、口臭の強さや臭いの質も変化していく傾向にあります。

【チェックリスト】

[ ] 朝起きた時、口の中がネバネバして、不快な口臭を感じる。

[ ] 丁寧に歯磨きをしても、数時間後にはまた口臭が気になり始める。

[ ] 歯間ブラシやデンタルフロスを通した後に、そのフロスから嫌な臭いがする。

[ ] マスクをしていると、自分の息の臭いがこもって気になることが多い。

[ ] 清潔なコップやビニール袋に息を吹きかけて数秒後に嗅いでみると、不快な臭いがする。

[ ] 舌の表面が全体的に白っぽい、あるいは黄色っぽい苔のようなもので覆われている（舌苔）。

[ ] 歯磨きの時に歯ブラシに血が付いたり、うがいをすると血が混じったりすることがよくある。

[ ] 歯茎が赤く腫れぼったい感じがする、または触るとブヨブヨしている箇所がある。

[ ] 歯茎がムズムズするようなかゆみを感じたり、指で押すとジワッと血や膿のようなものが出たりすることがある。

[ ] 以前より口の中が乾燥しやすくなったと感じる（ドライマウスの傾向）。

[ ] （もしあれば）家族やパートナー、ごく親しい友人から、それとなく口臭を指摘された、あるいは指摘されているような気がする。

判定の目安：

このチェックリストはあくまで目安ですが、当てはまる項目が多いほど、歯周病が口臭の原因となっている可能性が高まります。

歯科医院では、専門的な検査を通じて口臭の原因を特定し、あなたに合った適切な治療法やケア方法を提案してくれます。不安を抱え続けるよりも、まずは専門家に相談してみましょう。

正しい歯磨き

口臭改善の基本は、何と言ってもプラークをしっかり除去するための正しい歯磨きです。毎日行っている歯磨きだからこそ、その質を見直すことが大きな変化に繋がります。

歯間ブラシやデンタルフロスで歯間ケア

歯磨きに加えて、歯間ブラシやデンタルフロスを用いて、歯間をケアすることも重要です。

歯間ブラシやデンタルフロスは、毎日の歯磨き時に取り入れることが大切です。特に就寝前は、唾液の分泌が減って細菌が繁殖しやすくなるため、しっかりとケアを行いましょう。

初めて使用する際に出血することがありますが、これは歯茎に炎症があるサインです。正しいケアを継続することで、次第に出血はおさまります。ただし、痛みが強かったり、出血が長く続く場合は、歯科医師に相談することをおすすめします。

目的に合わせた歯磨き粉を用いる

毎日の歯磨きや歯間ケア、舌ケアを基本とした上で、さらに効果を高めるために補助的なアイテムを活用するのも良いでしょう。

たとえば、歯周病や口臭が気になる方向けの薬用歯磨き粉には、様々な有効成分が配合されています。下に整理したので、ご自身の目的に合ったものを選んでください。

※ただし、特定の製品の効果については十分なエビデンスがない場合があります

必要に応じて行われる専門的な治療

歯周基本治療を行っても、歯周ポケットの深い部分の炎症が改善しない場合や、より進行した歯周病の場合は、以下のような専門的な治療が必要になることがあります。

・歯周外科治療

進行した歯周病に対する積極的なアプローチ 歯周基本治療だけでは除去しきれない深い部分の歯石や、炎症によってできた不良な歯肉組織（不良肉芽組織）を取り除くために行われる小手術です。

・抗菌療法

・口臭専門外来での治療

より専門的なアプローチ 歯周病治療と並行して、あるいは歯周病以外の原因も考えられる場合、口臭治療を専門に行う「口臭外来」を紹介されることもあります。口臭外来では、より精密な口臭測定検査や、生活習慣指導、カウンセリングなど、口臭に特化したアプローチが行われます。

これらの専門的な治療が必要かどうかは、歯周基本治療後の再評価（歯周ポケットの深さや炎症の状態などを再度検査すること）の結果に基づいて、歯科医師が判断し、患者さんと相談しながら進められます。

徹底したプラークコントロール

歯周病と口臭の最大の原因であるプラーク（細菌の塊）を、毎日徹底的に除去し続けましょう。歯科医院で指導された正しい歯磨き方法、歯間ブラシやデンタルフロスの適切な使用を、毎日の習慣として確実に継続することが大切です。

唾液の力を最大限に活かす

唾液は、お口の中の汚れを洗い流す自浄作用、細菌の増殖を抑える抗菌作用、歯の再石灰化を促す作用、粘膜を保護する作用など、多くの重要な役割を担っています。唾液の質と量を良好に保つことが、歯周病や口臭の予防に繋がります。

食生活で気をつけること

お口の健康は、全身の健康と密接に関連しており、日々の食生活も歯周病のリスクに影響を与えます。

禁煙

喫煙は歯周病の最大のリスク因子であり、喫煙者は非喫煙者に比べて発症率・進行速度が高く、治療効果も劣ります。ニコチンは血管を収縮させて血流を悪化させ、酸素や栄養の供給を妨げるうえ、免疫力を低下させて歯周病菌への抵抗力を弱めます。

また、タールが歯面に付着し、プラークがつきやすくなります。禁煙は歯周病・口臭の再発リスクを大幅に減らす最も有効な手段です。自力で難しい場合は、禁煙外来のサポートを活用しましょう。

定期的な歯科検診

どれだけ丁寧にセルフケアを行っていても、どうしても磨き残しは出てしまうもので、ご自身では気づかないうちに歯周病が再発・進行している可能性もあります。歯科医院での定期的なメンテナンスは、良好な口腔状態を維持し、再発を早期に発見・対応するために欠かせません。