保険適用の入れ歯の費用相場は?自費の入れ歯との違いも解説
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入れ歯を保険診療で製作する場合、自己負担額の目安は部分入れ歯でおおよそ5,000円~15,000円、総入れ歯で15,000円前後です。これに対して、自費診療の入れ歯は全額自己負担となり、使用する素材や設計、医院ごとの方針によって金額に幅があります。
本記事では、保険で作る入れ歯の費用相場を中心に、自費診療との違いやそれぞれの特徴を解説。さらに2021年度から一部保険適用が認められた「マグネットデンチャー」についても分かりやすく紹介します。
保険適用の入れ歯の費用相場
保険適用の入れ歯の費用相場は、部分入れ歯か、総入れ歯によって異なります。なお、保険診療で作る入れ歯は、全国共通の診療報酬に基づいて計算されるため、どの歯科医院でもおおむね大きな費用差はありません。
- 部分入れ歯の場合
- 総入れ歯の場合
それぞれのケースの相場について、紹介します。
部分入れ歯の場合
部分入れ歯は、残っている歯にバネ(クラスプ)をかけて固定する取り外し式の入れ歯で、
保険診療での費用は5,000円~15,000円程度が一般的な目安です。金額の幅は、失った歯の本数や部位によって異なりますが、1~2本程度であれば比較的低額に収まり、複数の歯を補う場合はやや高くなる傾向があります。
総入れ歯の場合
歯をすべて失った場合に用いられる総入れ歯の保険診療における費用は、おおむね10,000円~15,000円前後が目安です。保険診療の場合、総入れ歯であっても部分入れ歯よりも極端に費用相場が上がる、ということは少ないとされています。
保険適用の入れ歯の特徴
保険適用の入れ歯には、一定の条件があります。
以下の表は、それぞれの項目ごとの特徴をまとめたものです。
項目 | 特徴 |
---|---|
素材 | アクリルレジン(部分入れ歯は金属バネ付き) |
製作工程・かけられる時間 | 約2~3週間 |
費用負担 | 1割または3割負担(全国一律) |
作り直し | 6ヵ月以内は不可、調整・修理は可能 |
素材
保険診療の入れ歯の素材は、アクリルレジン(プラスチック樹脂)が基本です。部分入れ歯ではさらに金属のバネ(クラスプ)を残っている歯にかけて固定する仕組みになっています。
入れ歯の素材としてアクリルレジンのほかにもセラミックやチタンなどさまざまなものがありますが、保険の対象になるのはアクリルレジンのみであり、原則としてその他の素材は選べません。
入れ歯の製作工程・かけられる時間
保険診療では、診療報酬に沿った範囲で入れ歯が製作されるため、工程にかけられる時間は限られています。そのため2~3週間程度で完成するケースもあり、通院回数も比較的少ない傾向があります。
費用負担
費用は全国共通の診療報酬に基づき算定され、患者さんの自己負担は1割または3割のいずれかです。負担割合は年齢や所得区分によって異なり、同じ条件であれば地域や医院による差は少ないとされています。
作り直し
保険診療の入れ歯は、原則として6ヵ月以内の再製作ができないというルールがあります。これは、部分入れ歯でも総入れ歯でも変わりません。裏打ちも不可です。
ただし、入れ歯の調整や修理は回数の制限なく行えます。
自費の入れ歯の費用相場
自費診療の入れ歯は、素材や設計の選択肢が多い分、費用は幅広く設定されています。また医院や地域によって差が出るケースも少なくありません。
- 部分入れ歯の場合
- 総入れ歯の場合
自費診療における、それぞれの費用相場を紹介します。
部分入れ歯の場合
自費の部分入れ歯は、使用する素材や設計内容によって費用に差が出ます。金属床義歯や、バネが目立ちにくいノンクラスプデンチャーなどが選択肢に含まれ、相場は10万~50万円程度が一般的です。
機能の改善だけではなく見た目や装着感を考慮した設計が可能であるため、歯の状態や患者さんの希望に応じて費用相場も変わります。
総入れ歯の場合
自費診療で総入れ歯を作る場合は材質・審美性・適合性などによって費用に幅があるため、40万~80万円程度が相場です。素材としてはコバルトクロムやチタンなどの金属床、あるいはクッション性を持たせるためのシリコン裏装などが選ばれることもあります。
費用は設計や技工の内容によって変動し、医院によって提示額が異なる点も特徴です。
自費の入れ歯の特徴
自費の入れ歯の特徴について、特徴を表にまとめました。
項目 | 特徴 |
---|---|
素材 | コバルトクロム、チタン、セラミック、シリコンなどから選択可能 |
製作工程・かけられる時間 | 数週間~数ヵ月、工程や設計によって変動 |
費用負担 | 全額負担 |
作り直し | 制限なし、必要に応じて再製作可能 |
素材
自費診療では、アクリルレジン以外のコバルトクロム・チタン・セラミック・シリコンなど複数の素材が利用可能です。その結果、強度や薄さ、見た目の自然さなどを考慮して選ばれることがあります。
部分入れ歯の場合には、金属バネを使わない設計を取り入れることもでき、審美性を重視した設計が行われるケースも少なくありません。
入れ歯の製作工程・かけられる期間
自費診療では、製作工程にかける時間や試適の回数に保険診療のような明確な制限がありません。数ヵ月かけて型取りや調整を行うケースもあり、完成までに時間がかかる場合もありますが、その分、設計や仕上げの内容を調整できる傾向があります。
作り直し
自費診療の入れ歯には、作り直しに関しても保険診療のように明確なルールが設けられていません。そのため6ヵ月以内であっても、作り直しをすることが可能です。回数制限もないため、必要に応じて複数回の再製作ができます。
新たに保険適用になったマグネットデンチャー(マグネット式入れ歯)とは
マグネットデンチャーとは、磁石の力を利用して入れ歯を安定させる方法で、近年になって一定の条件を満たせば保険診療でも扱えるようになった入れ歯の一種です。
- マグネットデンチャーとは
- マグネットデンチャーの特徴
- マグネットデンチャーの注意点
従来の入れ歯に加えて検討できる方法として検討されることもあり、その仕組みや特徴、治療を受ける際に知っておきたい注意点について解説します。
マグネットデンチャーとは
マグネットデンチャーとは、磁石の力を利用して入れ歯を固定する義歯を指します。2021年度から一定条件下で保険適用が認められた治療法で、残っている歯の根に磁性体を取り付け、入れ歯側の磁石と吸着させる仕組みで、クラスプ(バネ)を用いない点が特徴です。
ただしすべてのマグネットデンチャーが保険適用となるわけではなく、支台にインプラントを使用した場合や、歯を支える組織に問題がある場合などは適用外になります。保険適用になるか否かはそれぞれのケースで異なるため、歯科医師の判断が必要です。
マグネットデンチャーの特徴
マグネットデンチャーは磁力で固定するため、審美性に配慮でき、着脱も比較的容易とされています。また、側方力がかかりにくいため、歯への負担に配慮された構造を持つ義歯です。
それぞれ、詳しく説明します。
取り外しがしやすい
マグネットデンチャーは磁力で吸着しているため、力をかければ比較的容易に取り外せます。着脱がシンプルであるため、高齢の方や手の細かな動作に制約がある方でも、自分で取り扱いやすいとされている義歯です。
特に毎日の衛生管理が大切な入れ歯において、着脱がスムーズであることは手入れのしやすさに貢献する点といえるでしょう。
安定しやすい
磁石による吸着は一定の力を維持するため、入れ歯が動きにくく、食事や会話の際のズレを抑えやすいとされている治療法です。
特に下顎の入れ歯は舌や筋肉の動きで外れやすい傾向がありますが、マグネットデンチャーでは磁力によって固定され、構造上バネが外れたり、ずれたりすることが少ないと考えられます。そのため装着時の違和感にも配慮されているといえるでしょう。
見える場所に金属を使用していない
マグネットデンチャーはバネを使わず磁力で固定するため、口を開けても金属が見えることは原則ありません。
一見して目につく要素が少なく、自然な見た目を保ちやすいとされています。職業柄、人前で話す機会が多い方や、従来の部分入れ歯の金属が気になる方にとっては選択肢のひとつとなるでしょう。
マグネットデンチャーの注意点
マグネットデンチャーは利便性や審美性に配慮できる一方で、使用できないケースや注意すべき場面があります。治療を検討する際には、以下の点を理解しておくことが大切です。
金属アレルギーの場合は不可
磁性体には金属が使用されるため、金属アレルギーを持つ方は適応外となる可能性があり否定できません。アレルギー反応は口腔内の炎症や不快症状につながるだけではなく、まれにですがアナフィラキシーショックを起こすケースもあるため、治療開始前に必ず歯科医師へ既往歴を伝え、相談することが求められます。
MRI検査の際は要注意
マグネットデンチャーは体内に磁石を埋め込む構造のため、MRI検査では磁力によって画像が乱れることがあり注意が必要です。撮影時には入れ歯を取り外す対応が必要になる場合もあります。
持病のために定期的にMRI検査を受ける方は、マグネットデンチャーが適応できないケースもあるため、治療を希望する段階で主治医や歯科医師と相談し、将来的な検査への影響を考慮することが重要です。
総入れ歯は適用外
マグネットデンチャーは残存歯の根に磁性体を装着する構造のため、すべての歯を失った総入れ歯では使用できません。また、残存歯があっても根管治療が不十分で強度が保てない場合には適用が難しいケースもあります。
適用については歯の状態を精密に確認し、支台として利用できる歯があるかどうかの歯科医師による判断が必要です。
まとめ
入れ歯には保険診療と自費診療があり、それぞれ費用や性質が異なります。保険診療は全国共通の診療報酬に基づいて算定されるため、原則としてどこでも同じ条件で利用できる仕組みです。自費診療では、使用できる素材や設計の選択肢が広く、口腔内の状態や希望に応じた方法を検討できる点が特徴といえます。
近年では、磁石を利用するマグネットデンチャーが一部保険適用となりました。ただし、金属アレルギーやMRI検査の影響、総入れ歯には適用できないといった条件もあるため、事前に確認する必要があります。
入れ歯を選ぶ際には、費用だけでなく、口腔内の状態やライフスタイル、将来的な治療計画も踏まえて判断することが大切です。最終的には歯科医師と相談し、自分に合った方法を選ぶことが望まれます。
入れ歯を作る際には、治療法だけでなく「どの歯科医院が自分に合うか」が重要です。全国・エリア別で評判の良い歯科医院を多数掲載している「ベストチョイス」もあわせてご覧ください。
以下でご紹介するページでは、入れ歯で悩んでいる方に向けた歯科医院の一覧を、参考情報として掲載しています。情報収集の一環としてご利用ください。
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