子供のガミースマイルは治せる?笑うと歯茎が見える原因や治療法を解説

子供のガミースマイルは成長に伴って一時的に気にならなくなるケースもありますが、治療が必要になるケースが多く見られます。見た目に対する悩みや心理的な影響を受ける子供も少なくなく、放置すると歯並びや口腔内の環境に影響する可能性もあります。
この記事では、ガミースマイルの原因や治療の考え方、放置した場合のリスクなどをわかりやすく解説します。子供の笑顔をより自然で健やかに育むための参考にしてください。
子供のガミースマイルは自然に治る?
子供のガミースマイルは、成長とともに一時的に目立たなくなることもありますが、骨格や筋肉の発達が関係している場合は自然に治りにくい傾向があります。特に上顎の骨格や唇の筋肉が原因の場合、経過を見守るだけでは改善しにくく、歯科医による観察や治療を視野に入れることが大切です。
子供のガミースマイルを正しく理解するために、まずは次の3つの視点から整理してみましょう。
- ガミースマイルとは
- 自然治癒は難しい
- 治療法はいくつかある
ガミースマイルとは
ガミースマイルとは、笑ったときに上の歯茎が通常より多く見える状態を指します。一般的には、笑顔で歯茎が3mm以上見える場合が「ガミースマイル」と診断される基準とされていますが、医学的な病気ではありません。しかし、見た目に対するコンプレックスや、周囲の視線が気になるといった心理的負担を感じる子供もいます。
ガミースマイルは、骨格・歯の位置・唇の筋肉の動きなど、複数の原因が関係することが多く、治療法もさまざまです。
自然治癒は難しい
子供のガミースマイルは、成長とともに一部が改善するケースもあります。しかし、上顎の骨格の発達や上唇の筋肉の働きが原因となっている場合は、自然治癒は難しいという見方が一般的です。
特に、上顎が前方に突出していることが原因のガミースマイルや、上唇を持ち上げる筋肉が過剰に発達している症例では、治療なしでの改善が見込めないケースが多く見られます。こうした場合、歯列矯正や筋機能訓練など、成長段階に合わせた治療介入が必要になることも少なくありません。
治療法はいくつかある
ガミースマイルの治療には、原因や年齢に応じてさまざまな方法があります。大人の場合は、原因や重症度に応じてボトックス注射や外科的処置が行われることもありますが、子供の場合は骨格や筋肉がまだ成長途中のため、こうした処置は基本的に行いません。
子供には、成長を妨げない矯正治療や筋機能トレーニングなどが中心です。代表的なものとして、上顎の発達をコントロールするヘッドギア矯正、歯の位置や角度を整えるマウスピース矯正、唇や舌の使い方を改善するMFT(口腔筋機能療法)などが挙げられます。
子供のガミースマイルの原因4つ
子供のガミースマイルは、骨格や歯、筋肉、遺伝など複数の要因が関与して発現する例が少なくありません。
子供のガミースマイルの主な原因には、次の4つがあります。
- 骨格の問題
- 歯の大きさ・長さや歯茎の状態
- 上唇の筋肉の発達
- 遺伝的要素
それぞれの原因について、詳しく見ていきましょう。
骨格の問題
ガミースマイルの原因のひとつに、骨格の問題が挙げられます。上顎と下顎の位置関係にずれが生じると、笑った際に歯茎が強調されるためです。
上顎が前方または下方へ成長しやすいタイプや、下顎の発達が相対的に弱いタイプでは、上の歯列全体が目立ちやすく、歯茎の露出が多くなる特徴があります。また、指しゃぶりや口呼吸などの癖が続くと、上顎の前方成長を助長し、歯茎の見え方に影響を及ぼすこともあるでしょう。
骨格が関係するケースでは、成長に伴って状態が固定化しやすいため、発育の方向を定期的に確認しながら、矯正治療を行う時期を慎重に見極めることが重要です。
歯の大きさ・長さや歯茎の状態
ガミースマイルは、歯や歯茎そのものの形態が関係しているケースも少なくありません。歯が短かったり、歯の位置が通常より下がってたりする場合、笑った際に歯茎の面積が相対的に大きく見える傾向があります。
また、歯の萌出すべき部分が歯茎に埋まってしまっている状態のため、ガミースマイルに見えるケースも。その原因としては歯茎の厚さや歯が生えるスペースの不足、全身疾患の可能性も考えられます。
上唇の筋肉の発達
ガミースマイルは、上唇の筋肉の働きが強すぎることによっても起こります。特に「上唇挙筋(じょうしんきょきん)」や「上唇鼻翼挙筋(じょうしんびよくきょきん)」と呼ばれる筋肉が過剰に発達していると、笑った際に唇が通常よりも高く引き上げられ、歯茎が大きく見える状態につながりかねません。
この筋肉の働きは、生まれ持った表情の癖や遺伝的な要素に加え、幼少期の指しゃぶりや舌で前歯を押す習慣などの影響を受ける場合があります。こうした癖が長く続くと、唇を持ち上げる筋肉が常に刺激され、動きの範囲が徐々に広がっていく可能性も否定できません。
また、笑うときに上唇全体を大きく動かす表情の癖が定着している子供では、筋肉のバランスが崩れやすく、歯茎の露出が強調されるケースも考えられます。
遺伝的要素
ガミースマイルは、骨格や歯茎の形、唇の動き方といった要素が複合的に影響する症状であり、その一部は遺伝によって受け継がれることがあります。両親のどちらか、あるいは双方、また親族にガミースマイルの傾向がある場合、子供にも同じ特徴が見られるケースは少なくありません。
特に、上顎の成長の仕方や歯の位置、唇の筋肉の働き方などは遺伝的要因が関与しやすい部分です。顔全体の骨格バランスや表情筋のつき方は生まれ持ったものが大きく、生活習慣だけで修正するのは難しい領域といえます。
ただし、遺伝の影響があったとしても、それだけで決まるわけではありません。口呼吸や咬み合わせ、姿勢などの環境要因が重なることで、ガミースマイルがより目立つようになることもあります。
子供のガミースマイルを放置すると起こり得るデメリット
ガミースマイルは、見た目の問題だけでなく、口腔環境や心理面にも影響を及ぼすことがあります。成長とともに目立たなくなる場合もありますが、原因によっては放置することで悪化する懸念もあります。ここでは、放置したまま経過を見た場合に考えられる影響を見ていきましょう。
- 心理的な影響
- 乾燥による口腔内環境の悪化
- 歯並びやかみ合わせへの影響
心理的影響
ガミースマイルは、子供の見た目のコンプレックスにつながることがあります。笑顔のたびに歯茎が目立つことで、人前で笑うのを控えるようになったり、写真を避ける傾向が見られたりすることもあるでしょう。こうした意識が続くと自己表現が制限され、対人関係に影響を与える可能性も否定できません。
特に思春期以降は外見への関心が高まりやすく、笑顔に自信を持てないことがストレスや自己肯定感の低下につながるケースもあります。歯や口元の見え方が心理面に影響する点は、ガミースマイルの見過ごせない側面といえるでしょう。
乾燥による口腔内環境の悪化
歯茎が露出しやすい状態が続くと、唇が完全に閉じにくくなり、口腔内が乾燥しやすくなります。乾燥は唾液の働きを弱め、虫歯菌や歯周病菌が繁殖しやすい環境を作り出す要因になるという点も、ガミースマイルの懸念点です。
唾液は、口腔内の汚れや細菌を洗い流し、歯の表面に保護膜を作ることで虫歯や歯周病を防ぐ重要な働きを担っているほか、細菌の繁殖を抑え、口臭の原因となる物質の生成を防ぐ抗菌・自浄作用もあります。
そのため、唾液の分泌量が低下して口腔内が乾燥した状態が続くと、これらの作用が十分に機能せず、細菌が増殖しやすくなって虫歯や歯周病のリスクが高まるとともに、口臭の発生につながる恐れもあります。
歯並びへの影響
ガミースマイルは、見た目だけでなく歯並びや噛み合わせにも影響を与えるケースがあります。上顎の骨が過度に発達しているケースでは、歯列全体が前方に押し出され、前歯が突出しやすくなる傾向が見られるためです。
このような状態になると、上下の歯が正しく噛み合わず、咀嚼効率が低下することもあります。成長期の骨格に影響を及ぼすと、後の歯並びや顔貌のバランスにも関係する可能性があるため、早い段階で原因を把握しておくことが大切です。
子供のガミースマイルの治療法と開始時期
子供のガミースマイルは、原因によって適した治療法や開始時期が異なります。骨格の成長、歯の位置、筋肉の使い方など、どの要素が影響しているかを見極めることが重要です。
以下の表では、子供のガミースマイルにおける代表的な治療法とその開始時期の目安、注意点をまとめました。
治療法 | 主な対象 | 開始時期の目安 | 注意点・留意事項 |
---|---|---|---|
ヘッドギア矯正 | 上顎骨の過成長 | 6〜9歳頃 | 装着時間が長く、見た目の抵抗感が出ることがある |
マウスピース矯正 | 歯列や歯の位置の異常 | 7〜9歳頃 | 使用時間が不足すると効果が出にくい |
MFT
(口腔筋機能療法) |
口周りの筋肉バランスの乱れ | 6歳頃〜 | 継続的なトレーニングが必要で、即効性は低い |
ヘッドギア矯正
ヘッドギア矯正は、上顎骨の過剰な成長が原因となるガミースマイルに適した方法です。頭部や首に装着する器具(フェイスボウなど)を使い、奥歯から力をかけて上顎骨の成長を抑制し、上下の顎のバランスを整えます。
一般的には6〜9歳頃の成長期に始めると効果が得やすいとされていますが、装着に慣れるまで時間がかかることもあり、外見への抵抗感を持つ子供も少なくありません。一定時間の装着が必要となるため、家庭での協力が欠かせない治療法といえます。
マウスピース矯正
マウスピース矯正は、歯列や歯の位置のずれが原因でガミースマイルになっている場合に適していることがあります。透明なマウスピース型の装置を用いて少しずつ歯を動かし、口元のバランスを整える治療法です。
開始の目安は7~9歳前後で、永久歯が生え始める時期が一般的とされています。取り外しが可能なため衛生的に保ちやすく装着時の見た目にも配慮できますが、装着時間が不足すると効果が出にくいこともあるため家庭での管理や保護者のサポートが重要です。
MFT(口腔筋機能療法)
MFT(口腔筋機能療法)は、舌・唇・頬などの筋肉の使い方を整えるためのトレーニングです。筋肉の動き方や癖が原因で歯茎が見えやすい子供に対して行われることが多く、表情筋のバランス改善を目指します。
6歳頃から始めるのが目安で、装置を使わないため身体的な負担は比較的少ない一方、家庭での継続練習が欠かせず、成果が現れるまでに時間を要する点がデメリットといえるでしょう。
まとめ
子供のガミースマイルは、成長とともに目立たなくなる場合もある一方で、骨格や筋肉、歯列などの構造的な要因が関係していることも少なくありません。放置すると、見た目だけでなく歯並びや口腔内環境、さらには心理面にも影響を及ぼす可能性もあるでしょう。
ガミースマイルの治療は、歯並びや表情の印象を整えるだけでなく、子供の自信や笑顔を取り戻す一歩にもつながります。気になる症状がある場合は歯科医師に相談し、成長段階に合った治療方針を確認しましょう。
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