子供の歯並びは成長すると自然に治るもの?矯正するか否かの判断基準

子供の歯並びは、成長とともに自然に整う場合もあれば、放置すると悪化するケースもあります。そのため「様子を見ても大丈夫なのか」「矯正を始めたほうが良いのか」など、判断に迷うこともあるでしょう。
本記事では、子供の歯並びが自然に治るケースと治らないケースの違いを中心に、見極める時期や注意したい生活習慣、矯正を検討すべきサインなどを解説します。
子供の歯並びは自然に治る?
子供の歯並びは自然に治るケースと、矯正が必要なケースに分かれます。成長するにつれて自然に治る場合、子供の成長に伴って顎の骨が発達し、その結果歯の位置が変化し歯並びの乱れが自然に改善する、という流れが一般的です。
一方で、骨格的な要因が関係する場合や噛み合わせの問題が影響している場合は、成長を待っても歯並びが改善しないことが多く、矯正が必要になるケースも少なくありません。
また、子供の歯並びが自然に治るかどうかは成長だけでなく、生活習慣や筋肉の発達にも左右されます。口呼吸の癖や指しゃぶり、頬杖などの悪習慣は、顎の成長を妨げ、歯並びの乱れを助長する恐れも否定できません。
そのため、「自然に治る可能性がある」と判断するには、歯の状態・顎の発達・生活習慣を総合的に見極めることが欠かせません。見た目だけで判断するのは難しく、年齢や成長スピードによっても状況は異なります。そのため定期的に歯科医院でチェックを受け、必要に応じて小児矯正の専門医に相談することが、適切な判断につながるでしょう。
子供の歯並びはいつ頃見極める?
子供の歯並びは、永久歯が生え始める6歳頃を目安に観察を始めると良いとされています。この時期は乳歯と永久歯が混在する「混合歯列期」にあたり、歯の大きさや顎の成長方向が次第に明確になるためです。個人差はありますが、上顎の発達は6〜10歳頃、下顎は10〜15歳頃にかけて活発になるため、この間の変化を丁寧に追い、見極める必要があります。
成長初期の段階では、歯並びの乱れが自然に整うことも少なくありません。乳歯列に隙間がある場合は、永久歯が生えるスペースが確保されている証拠であり、経過を見守ることもあります。ただし、前歯が極端に重なっていたり、噛み合わせがずれていたりする場合は、顎の発達や骨格の問題が関係している可能性が否定できません。
また、歯並びの見極めには乳歯の抜け方や生え変わりの順序も大きく関係します。そのため家庭では子供の歯並びについての見極めは難しく、歯科医師に任せるべきといえるでしょう。
歯並びの異常を早期に発見できれば、治療を始めるタイミングを適切に選べるだけでなく、将来的な矯正の負担を軽減できる可能性もあります。
自然に治る可能性が高い子供の歯並び
子供の歯並びは、成長とともに自然に整うこともあります。ただし、矯正が必要なケースも少なくないため放置しても問題のないものと、注意が必要なものを見極めることが大切です。
成長の過程で自然に歯並びの改善が見込まれる例としては、次のようなものがあります。
- 乳歯のあいだに隙間がある(すきっ歯)
- 前歯が八の字に生えている
それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。
歯と歯のあいだに隙間がある(すきっ歯)
乳歯の段階で歯と歯のあいだに隙間が見られるのは、歯並びの異常ではありません。むしろ、永久歯が生えるスペースを確保するうえで望ましい状態といえます。
永久歯は通常乳歯よりも大きいため、この隙間がないと生え変わりの際に歯が重なったり、ねじれたりする原因になることがあるためです。したがってすきっ歯の多くは成長とともに自然に改善し、経過観察で十分と判断されるケースが多いといえるでしょう。
なお、こうした隙間にはいくつかの種類があります。
霊長空隙
霊長空隙(れいちょうくうげき)は犬歯の周囲に生じる隙間を指し、上顎と下顎の片方、または両方に見られることがあります。上顎の霊長空隙は前歯がきれいに並ぶためのスペース、下顎のものは6歳臼歯が正しい位置に生えるために必要とされるもので、どちらも自然な成長過程の一部であり通常は治療を要するものではありません。
発育空隙
発育空隙(はついくくうげき)とは、霊長空隙以外の乳歯列全体にみられる隙間を指します。この隙間は顎の骨が成長し、永久歯が生えてくる過程で徐々に埋まっていくのが一般的な流れです。
こうした発育空隙が確認できることは、顎の発達が順調に進んでいるサインといえるでしょう。
リーウェイスペース
乳歯と永久歯の大きさの違いによって生まれる余裕のことを、リーウェイスペースと呼びます。永久歯がやや小さいため、乳歯が抜けたあとにできるわずかな隙間が歯列の整いを助ける役割を果たすため、問題ないケースがほとんどです。
ただし、虫歯や外傷などで乳歯を早期に失うと、このスペースがなくなり、歯が詰まりやすくなる場合があります。適切な時期まで乳歯を保つことが、自然な歯並びを促すうえで重要といえるでしょう。
前歯が八の字に生えている
前歯がやや八の字状に斜めに生えて隙間があるのは、乳歯から永久歯へ生え変わる際によく見られる現象です。この時期は顎の骨が発達し、前歯を押し広げるように成長していくため、時間の経過とともに歯列が整うことが多くあります。
永久歯がすべて生えそろっても隙間が残る場合は、顎の発達バランスや噛み合わせに問題がある可能性もあるため、歯科医院での確認が望ましいでしょう。
矯正を検討したほうが良い子供の歯並び
子供の歯並びの乱れには、成長によって自然に整うケースもあれば、放置すると悪化するタイプもあります。特に以下のようなケースでは、早めに歯科医院に相談することが望ましいでしょう。
- 上顎前突(出っ歯)
- 反対咬合(受け口)
- 過蓋咬合(深すぎる噛み合わせ)
- 開咬(前歯が重ならない)
- 叢生(乱ぐい歯)
ここでは、矯正治療を検討すべき代表的な歯並び5つの特徴を解説します。
上顎前突(出っ歯)
上の前歯が前方に突き出している状態が、上顎前突(出っ歯)です。指しゃぶりや舌で前歯を押す癖、口呼吸などが原因となることも多く、歯の傾きだけでなく唇の閉じにくさにもつながります。
口を開けたままの状態が続くと、口腔内が乾燥しやすくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まる点も無視できません。軽度であれば経過観察が可能な場合もありますが、噛み合わせや発音に支障がある場合は、早期の矯正が推奨されます。
反対咬合(受け口)
反対咬合は下顎が上顎より前に出ている状態で、いわゆる「受け口」を指します。このケースでは、骨格や遺伝が関与することが少なくありません。噛み合わせが通常の状態と逆転しているため、咀嚼機能に影響が出やすく、顎関節への負担や発音の不明瞭さを引き起こすこともあります。
見た目の印象に関わるだけでなく、成長とともに骨格差が広がる傾向があるため、早期の専門的評価が重要です。特に永久歯が生え始める時期に見られる場合は、顎の成長方向をコントロールする治療が選択肢となることがあります。
このように、骨格のずれを伴う不正咬合は「自然に治る」ことが少なく、観察よりも歯科医師など専門家に評価してもらい治療を検討することが望ましいといえるでしょう。
過蓋咬合(深すぎる噛み合わせ)
過蓋咬合は、上の前歯が下の歯を深く覆い、噛んだときに下の歯がほとんど見えない状態です。歯が歯茎に当たって傷ついたり、顎関節に負担がかかったりすることがあり、放置すると口腔内トラブルの原因になりかねません。
また、見た目が上顎前突と似ている場合も多く、外見だけでは判断が難しい点も特徴といえます。咀嚼時に顎の動きが制限されるため、機能面の不具合を見逃さないことが大切です。
開咬(前歯が重ならない)
上下の前歯が接触せず、噛み合わせに隙間がある状態を開咬といいます。食べ物を前歯で噛み切るのが難しくなるほか、息漏れによる発音の不明瞭さが生じるケースも少なくありません。
指しゃぶりや舌の突出癖など、口周りの筋肉バランスが関係する場合が多く、生活習慣の見直しで改善が期待できる場合もあります。ただし、成長しても閉じない場合は、歯や骨格に影響が及ぶ前に歯科医院の受診が望ましいでしょう。
叢生(乱ぐい歯)
叢生(乱ぐい歯)は歯が重なり合って並んでいる状態で、顎のスペース不足が主な原因です。見た目の問題に加えて、歯ブラシが届きにくくなることで虫歯や歯肉炎を起こしやすくなります。
また、発音のしづらさや咀嚼効率の低下につながる場合もあり、衛生面・機能面の双方で注意が必要です。特に、永久歯が生え始めた時点で明らかに歯列が重なっている場合は、自然に改善するのは見込めないことが多いため、早期の相談が求められます。
子供の歯並びは遺伝のみで決まる?
子供の歯並びには遺伝が関係する部分もありますが、遺伝のみで決まるわけではありません。
骨格の形や顎の大きさ、歯のサイズといった先天的な要素に加え、呼吸や咀嚼、姿勢などの生活習慣や環境要因も歯並びに大きな影響を与えます。
顎が小さく歯が大きい場合は、歯が並びきらずに重なりやすくなる可能性が否定できません。このような骨格的特徴は遺伝的傾向として受け継がれることがありますが、一方で、頬杖をつく、口呼吸を続ける、片側で噛むといった日常的な癖が歯並びを悪化させる原因になるケースも見られます。
つまり、親からの遺伝に加え、後天的な習慣が子供の歯並びに影響するといえるでしょう。
子供の歯並びへの悪影響が考えられる行為
日常生活のなかには、気づかないうちに歯並びへ負担を与える習慣もあります。小さな癖でも、長期間続くと歯の位置や顎の発達に影響を及ぼすことがあり、将来的な噛み合わせの乱れにつながる恐れが否定できません。
以下では、歯並びの形成に悪影響を及ぼす代表的な行為を紹介します。
- 口呼吸が習慣になっている
- 指しゃぶりをする
- 頬杖をつく
- 片側の歯のみで噛む
- 爪や唇を噛む
- 舌で前歯を押す
口呼吸が習慣になっている
口を開けたまま呼吸する習慣は、唇や頬の筋肉の発達が妨げられやすくなります。口を閉じる力が弱くなると、上の前歯が前方に押し出されやすくなり、いわゆる「出っ歯」の傾向を強めることがあるため、口呼吸の習慣は早い段階で改めるようにしましょう。
また、常に口を開けていることで口腔内が乾燥しやすくなり、虫歯や歯肉炎のリスクが高まる点にも注意が必要です。
指しゃぶりをする
乳幼児期の指しゃぶりは自然な行為ですが、長期間続くと歯列に影響が出ることがあります。
前歯が押し出されて開咬や上顎前突を引き起こす原因となり、噛み合わせにずれが生じやすくなる可能性が否定できません。
ただし無理にやめさせるのではなく、年齢や状況に応じて少しずつ頻度を減らすことが大切です。歯科や小児科と連携しながら、無理のない形で改善を図るとよいでしょう。
頬杖をつく
頬杖をつく癖は、片側の顎に継続的な圧力をかけることになります。その結果、顎の骨格がわずかに変形したり、歯の位置がずれたりすることに。
成長期の骨は柔らかく少しの力でも影響を受けやすいため、机に向かうときはできるだけ頬杖を避け、背筋を伸ばすよう意識しましょう。
片側の歯のみで噛む
いつも同じ側ばかりで噛む癖がつくと、反対側の顎が十分に発達しにくくなります。その結果、顔の左右差が出たり、歯の摩耗に偏りが生じたりするケースもあるため、注意しましょう。
両側で均等に噛むことを意識するだけでも、顎の筋肉や関節にかかる負担を分散でき、歯列の安定につながります。
爪や唇を噛む
集中しているときや緊張したときに、無意識で爪や唇を噛んでしまう子供も少なくありません。この癖は、前歯に過度な力を加えるため、歯列のずれを引き起こすことがあります。
また、歯や爪が欠ける原因にもなりかねないため、癖が見られる場合はストレスの原因や生活リズムを整えることも意識しましょう。
舌で前歯を押す
舌で歯を押す癖は、開咬や上顎前突の原因となりやすい傾向があります。発音の癖や鼻づまりなど、呼吸に関連する要因から生じることも多く、単なる悪習慣としてではなく、身体全体のバランスの問題として捉えることが重要です。
舌の正しい位置を覚えるためのトレーニング(舌癖改善訓練)を行うことで、歯並びへの負担を軽減できるケースもあります。
まとめ
子供の歯並びは、成長の過程で自然に整うこともあれば、矯正が必要となる場合もあります。
乳歯から永久歯へ生え変わる時期には、顎の発達や歯の大きさのバランスが変化しやすく、すきっ歯や前歯の八の字など、一時的な乱れが見られることも珍しくありません。
しかし、出っ歯や受け口、乱ぐい歯のように骨格的な要因を伴う場合は、成長を待っても自然に改善しにくいため、早めの相談が重要です。
「そのうち治るかも」と様子を見るよりも、定期的な検診や早期の専門相談を通じて、成長に合わせた対応を心掛けましょう。
「自然に治るのか」「矯正が必要なのか」判断に迷うときは、専門の歯科医師に相談するのがおすすめです。ベストチョイスでは、信頼できる歯科医院を地域別に紹介しています。お住まいのエリアから、子供の矯正に対応するクリニックを探してみてください。
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