【子供の受け口】歯の矯正治療は何歳がベスト？原因や治し方について

5～7歳程度での開始が一般的

乳歯から永久歯への生え変わりが始まる5～7歳頃は、顎の成長を利用して無理なく歯列を整えやすい時期です。この時期に矯正治療を始めると、顎の骨や歯の位置を自然な成長の流れに合わせて誘導できるため、矯正装置による負担も比較的軽く済むことが期待できます。

また、早い段階でバランスを整えることで、将来的に本格矯正が必要となるリスクを下げられるケースも少なくありません。

3歳ごろから治療開始するケースもある

骨格の成長そのものに問題がある場合は、3歳頃から早期矯正を行うケースもあります。この時期は乳歯列の形成がほぼ完了し、顎や筋肉の発達を正しい方向へ導きやすいとされているためです。

ただし、すべての子供に早期矯正が必要というわけではなく、歯科医師が顎の成長や噛み合わせを見極めたうえで判断します。

遅くとも小学校高学年までには開始するのが望ましい

永久歯が生えそろう小学校高学年以降になると、顎の骨の柔軟性が低下し、矯正での改善が難しくなる傾向があります。この段階で放置すると、成人後に外科手術を伴う治療が必要になる恐れも否定できません。

そのため、少なくとも小学校高学年になる前に、一度歯科医院で噛み合わせや骨格のバランスを確認しておくことが重要です。

骨格や歯の生え方など遺伝によるもの

受け口は、両親や親族に同じ傾向がある場合、遺伝的な影響を受けている可能性が否定できません。下顎が大きい、上顎が小さいといった骨格の特徴は親から子へ受け継がれやすく、噛み合わせや顔立ちに影響を及ぼすケースも見られます。

ただし、遺伝があるからといって必ず受け口になるわけではありません。成長期の姿勢や舌の動き、口呼吸などの生活習慣が加わることで、症状が強く出ることもあります。

このように、遺伝と環境要因の両方が関係しているため、早い段階で歯科医師に相談し、顎や歯の発達を定期的に確認しておくといいでしょう。

指しゃぶりや爪噛みなどの習慣

長期間の指しゃぶりや爪噛みは、歯に余分な力を加える原因になりかねません。前歯が押し出されたり、下顎の位置がずれたりすることで、上下の歯が正しく噛み合わなくなり、受け口の原因になるケースも見られます。

また、舌で前歯を押す「舌突出癖」がある場合も注意が必要です。この癖が続くと、歯並びだけでなく顎の成長方向にも影響することが知られています。子供が無意識にこうした癖を繰り返している場合は、歯科医院で相談し、トレーニングや生活習慣の改善を図るのが望ましいでしょう。

口呼吸・お口ポカン

鼻ではなく口で呼吸する「口呼吸」や、日常的に口が半開きの状態になる「お口ポカン」も、受け口の原因として挙げられます。口を開けた状態が続くと、唇や頬の筋肉バランスが崩れ、上顎の成長が抑えられることで下顎が前に出やすくなる傾向があるためです。

また、口腔内の乾燥による虫歯や歯肉炎のリスクも高まることが懸念されます。このような症状の背景には、鼻づまりやアレルギー性鼻炎など、呼吸器の問題が隠れていることも少なくありません。

そのため、歯科だけでなく耳鼻科と連携して原因を探り、正しい鼻呼吸と口の筋肉機能を目指すことが重要です。

成長とともに症状がひどくなる可能性がある

子供の受け口を放置すると、顎の成長とともに症状が進行することがあります。下顎の成長が過剰に進んだり、上顎の発達が抑えられたりすることで、見た目だけでなく噛み合わせや発音にも影響が出るケースも少なくありません。

特に思春期以降は骨の成長が急速に進むため、矯正だけでは十分に改善できない場合もあります。そのため、顎の骨が柔らかい幼少期に治療を始めることが望ましいでしょう。

大きくなってから治療すると外科手術が必要になるケースも

骨格に主な原因がある受け口は、成長が完了した後では装置による矯正だけで治すのが難しくなりがちです。その結果、下顎を後退させるなどの外科的矯正手術（外科手術を伴う治療）が必要になることもあります。

その点早期に治療を行えば、成長を利用して顎の位置を誘導できるため、手術を避けられる可能性が高まるでしょう。将来的な負担を減らす意味でも、早めの相談が重要です。

発音に問題が出ることがある

受け口では、舌の位置や動かし方に制限が生じるため、「さ行」「た行」「な行」などの発音が不明瞭になりやすい傾向があります。幼児期から正しい発音を練習するためにも、歯の位置や噛み合わせを整えることが大切です。

発音の改善には矯正治療だけでなく、舌や唇の動きを整えるトレーニングを併用することもあります。この時期に適切なサポートを受けておくことで、言葉の発達にも良い影響が期待できるでしょう。

噛みにくさが出る

受け口では上下の前歯が正しく噛み合わないため、食べ物を噛み切りにくい、飲み込みにくいなどの不具合が起こることがあります。こうした状態が続くと、消化に負担がかかるほか、顎や歯への負担も増す懸念がぬぐえません。

また、うまく噛めないことで食事の楽しみが減り、偏食や食事時間の長期化につながることもあるため、機能面の改善を目的に早期治療を検討するのもひとつの選択肢といえます。

マウスピース矯正

子供の受け口治療では、マウスピース型の装置が使われることがあります。この装置は取り外しが可能で痛みも少ない傾向があり、見た目も比較的目立ちません。食事や歯磨きのときに外せるため、普段どおりの生活を送りながら治療を続けられるのが特徴です。

特に軽度の受け口や、歯の傾きが原因で上下の噛み合わせがずれているケースに適しています。

拡大装置

拡大装置は、上顎の幅を少しずつ広げるための矯正装置です。取り外し式と固定式の2種類があり、どちらも顎の成長期に用いられ、ネジを回して少しずつ力を加えることで上顎を拡張し、歯が並ぶスペースを確保するとともに、噛み合わせのバランスを整えます。

上顎が小さい場合や、骨格そのもののアンバランスが原因となっている受け口に適した方法です。治療中は発音や食事への影響を抑えるよう、調整が行われます。

トレーニング

歯列や顎の形だけでなく、口の周りの筋肉の使い方が受け口に関わることもあります。このようなケースでは、舌や唇、頬の筋肉を正しく使うための「口腔筋機能療法（MFT）」と呼ばれるトレーニングが実施されるケースも少なくありません。

このトレーニングにより、歯並びの後戻り防止や発音改善にもつながることが期待できます。装置による矯正と並行して行うことで、より自然な口元のバランスを目指せるでしょう。