子供の小児矯正はいつから始めるべき？開始時期の目安や早期治療のメリットを解説

一期治療の場合

一期治療は、お子さんの顎の成長を利用して歯並びや噛み合わせの土台を整える段階です。

対象年齢はおおむね5〜12歳頃で、永久歯が生え始める時期に行われます。受け口や出っ歯など、顎の発育に関わる不正咬合の場合は、3歳頃からの早期介入を検討するケースも少なくありません。

この時期の治療は、顎の骨がまだ柔らかいため、自然な成長を活かして無理なく改善を図れるのが特徴です。拡大装置やマウスピースを使って歯が並ぶスペースを確保し、永久歯の正しい生え方をサポートします。

二期治療の場合

二期治療は、永久歯が生え揃った12歳以降を目安に行う、一期治療よりも本格的な矯正です。成人矯正と同様の装置を使用し、歯列全体の位置や噛み合わせを整えます。一期治療で顎のバランスを整えておくことで、この段階の治療がスムーズになり、抜歯の必要が減るケースも期待できるでしょう。

開始時期に厳密な制限はなく、必要に応じて中学生以降に始めることも可能です。

一期治療の場合

一期治療は、顎の成長を利用して歯が並ぶスペースを確保することを主な目的としています。治療期間はおおよそ2〜4年が目安とされますが、個人の成長スピードによって前後すると考えておきましょう。

この段階では、顎の成長を促したり、噛み合わせを整えたりする装置を使用します。そのため、定期的な通院を重ねながら経過を見守り、必要に応じて装置を調整するのが一般的です。

また、矯正が終わった後も成長の過程で歯並びが再び乱れないよう、経過観察を継続する場合もあります。

二期治療の場合

二期治療は、永久歯がすべて生え揃った段階で行う本格的な矯正治療です。平均して1〜3年ほどかかることが多いですが、症状や使用装置の種類によって期間が異なります。

一期治療を経ている場合は歯の位置が比較的整っているケースが多く、治療期間を短縮できるケースも少なくありません。

顎の骨の成長を利用して矯正できる

成長期のお子さんは顎の骨が柔らかく、発達の途中です。この段階で治療を始めることで、骨格の成長方向をコントロールしながら、歯列が正しく並ぶためのスペースを自然に確保しやすくなることが期待できます。

そのため上顎の発育を促したり、下顎の成長を抑えたりといった調整も可能です。こうした骨格的アプローチは、永久歯が生え揃ってからでは難しくなるため、早期治療の利点といえるでしょう。結果的に、将来的な抜歯や外科手術の必要性を減らせる場合もあります。

心理的な負担解消につながる

見た目のコンプレックスは、成長期のお子さんに心理的な影響を及ぼす可能性があります。その点歯並びの乱れを早期に整えることで、外見への不安が軽減され、お子さんが人前で笑うことや話すことに自信を持てるようになることが期待できるでしょう。

また、学校や友人との関わりの中で「見た目を気にしない安心感」が生まれると、自己肯定感や社交性の向上にもつながります。

口呼吸やお口ポカンの改善が期待できる

歯並びや顎のバランスが乱れていると、口呼吸や常に口が開いた状態（お口ポカン）になりやすくなります。これらの症状を放置すると口腔内が乾燥し、虫歯や歯肉炎のリスクが高まるだけでなく、顔つきや姿勢にも影響を及ぼすケースも少なくありません。

小児矯正で顎や舌の位置を整えることで、鼻呼吸がしやすくなり、自然に口を閉じられる状態へと導くことが期待できます。また、呼吸や嚥下（飲み込み）のバランスが整うことで、全身の発育にも良い影響をもたらすことも期待できるでしょう。

将来的な矯正の負担を減らせる可能性がある

早い時期に顎や歯列のバランスを整えておくことで、成長後に本格的な矯正が必要になった場合も、治療期間を短縮できる可能性があります。

成人になってからの矯正では骨が硬くなり動かしにくくなるため、大掛かりな外科処置を伴うケースも少なくありません。小児期から計画的に矯正を進めることで、そうしたリスクを未然に防ぎ、治療の費用や身体的負担を軽減できる可能性がある点もメリットといえるでしょう。

噛み合わせの改善が期待できる

噛み合わせが乱れていると、咀嚼が不十分になり、食事の効率が悪くなることがあります。さらに、特定の歯や顎に過度な負担がかかることで、将来的に歯の摩耗や顎関節症につながる恐れも否定できません。

小児矯正を通して正しい噛み合わせを形成することで、食べ物をしっかり噛み砕けるようになり、消化機能の向上にも役立つことが期待できます。発音の明瞭さが改善するケースもあり、機能面と健康面の双方で長期的なメリットが得られる可能性があるでしょう。

虫歯や歯周病のリスクが高まる可能性がある

矯正装置を装着すると、歯の表面に汚れがたまりやすくなります。特に固定式の装置では歯ブラシが届きにくく、磨き残しが出て虫歯や歯肉炎の原因となることも少なくありません。

このため、治療中はいつも以上に丁寧な歯磨きと定期的なクリーニングが大切です。小児歯科や矯正歯科では、ブラッシング方法やフロスの使い方など、お子さんの年齢や装置に合わせた指導を行う場合もあります。

家庭でのケアと専門的なサポートを両立させることが、健康的に矯正を進めるための重要なポイントです。

後戻りすることがある

矯正で整えた歯並びは、治療が終わっても安定するまで時間がかかります。装置を外した直後は歯や歯茎がまだ動きやすく、放置すると元の位置に戻ってしまう「後戻り」が起こることがあります。

このリスクを防ぐためには、保定装置（リテーナー）の継続使用が重要です。夜間や指定された時間に装着することで歯の位置が安定し、治療の成果を長期的に保てます。

特に成長期は顎が変化しやすいため、定期的なチェックも欠かせません。

治療期間が長いと感じることも

小児矯正は、数ヵ月で終わる治療ではありません。一期・二期と段階を踏んで進めるケースはもちろん、一期のみ、二期のみだけでも、それぞれ数年単位の治療になるケースがほとんどです。

そのため、途中で「長い」「面倒」と感じるお子さんも少なくありません。無理に我慢させるのではなく、目標を共有したり、経過を一緒に確認するなど、前向きに続けられる工夫が大切です。

保護者の励ましと歯科医師のサポートがあれば、モチベーションを維持しながら良い結果を得やすくなるでしょう。

反対咬合（受け口）

下の歯が上の歯より前に出ている状態を、反対咬合といいます。いわゆる「受け口」の状態です。遺伝や顎の成長バランスのほか、指しゃぶりといった生活習慣が関係している場合もあります。

反対咬合は見た目の印象だけでなく、噛み合わせのずれによって咀嚼がしにくくなり、消化に影響を与えるケースも皆無ではありません。また、発音が不明瞭になったり、顎関節に負担がかかったりすることもあるため、早期の矯正で顎の成長を正しい方向に導く必要があるといえるでしょう。

上顎前突（出っ歯）

上顎前突（出っ歯）は上の前歯が前方へ突出している状態で、受け口と同じく遺伝のほか、指しゃぶりや口呼吸などの習慣が影響することがあります。

見た目のコンプレックスにつながりやすいだけでなく、転倒や衝突時に前歯を損傷しやすい点にも注意が必要です。上顎の成長や舌の位置をコントロールすることで改善できるケースが多く、 早期に相談することで、より自然な形で歯並びを整えやすくなることが期待できます。

叢生（乱ぐい歯）

歯がでこぼこに並んだ状態を、叢生（乱ぐい歯）と呼びます。顎が小さい、乳歯の抜けるタイミングが早い、永久歯が大きいなどが原因です。

歯磨きがしにくいため、虫歯や歯肉炎のリスクが高まる傾向があります。また、見た目の印象にも影響しやすく、将来的に矯正装置を長期間装着する必要が出る場合も少なくありません。

顎の成長を利用できる小児期に歯が生えるスペースを広げることで、無理のない改善が期待できます。

開咬

開咬とは、上下の前歯が噛み合わず、隙間ができる状態を指します。原因としては、舌で前歯を押す癖や指しゃぶり、口呼吸などが挙げられるでしょう。

噛み切る力が弱く、発音が不明瞭になったり、食事中に口が閉じにくいなど、生活面への影響も少なくありません。早期に原因を見極め、舌や唇の使い方を改善するトレーニングを併用することで、自然な噛み合わせへと導ける可能性があります。