入れ歯の作り直しにかかる費用はどの程度?保険適用・自費別に解説

入れ歯を作り直す際の費用は、保険適用の場合と自費診療とで差が出ます。入れ歯が合わない状態を放置すると不快なだけではなく、噛みにくさや体の負担につながるケースもあるため、早めに状況を確認することが重要です。入れ歯の作り直しにかかる費用の目安を把握しておくことで、治療を進める際の見通しを立てやすくなるでしょう。
本記事では、入れ歯の作り直しの費用相場と期間の目安、合わなくなる主な原因や対処策について解説します。
入れ歯の作り直しにかかる費用の目安
入れ歯を作り直す際にかかる費用は、保険適用か自費診療かによって大きく変わります。ここでは、保険適用の場合と自費診療の場合に分けて、一般的な費用の目安をまとめました。
| 保険適用か自費診療か | 種類 | 作り直しの費用目安 |
|---|---|---|
| 保険適用(3割負担) | 部分入れ歯 | 約5千~1万5千円 |
| 総入れ歯 | 約1万~3万円 | |
| 自費診療 | 部分入れ歯 | 約15万~50万円 |
| 総入れ歯 | 約20万~200万円 |
保険適用の場合
保険適用で入れ歯を作り直す場合、使用できる素材や工程は全国で統一されており、費用も厚生労働省が定める診療報酬に基づいて算定されます。そのため、同じ保険診療であれば大きな差は生じにくく、自己負担が3割の場合は部分入れ歯で5千〜1万5千円程度、総入れ歯で1万〜3万円程度が一般的な目安です。
総入れ歯は口全体を補う必要があるため、作製に関わる工程が多く、部分入れ歯と比べて費用の負担が大きくなることがあります。いずれの入れ歯も保険内で作製する場合は費用が一定の範囲におさまりやすいといえるでしょう。
自費診療の場合
自費診療の場合、保険診療のような一律の基準がありません。そのため工程や使用する素材、また歯科クリニックによって価格設定が異なるため、費用の幅が大きくなります。部分入れ歯では15万~50万円程度、総入れ歯では20万~200万円程度が一つの目安となりますが、選ぶ素材や方法などによってこれ以上になる可能性も否定できません。
自費診療では、設計や噛み合わせの調整方法、使用する素材の選択肢が広がることから、保険適用よりも細かな調整や工程を組み込みやすくなる傾向があります。
自費診療を選ぶ場合は、費用面だけでなく、どのような作製方法が用いられるのか、どの素材が自分に合っているのかを事前に相談し、納得したうえで進めることが大切です。
入れ歯の作り直しにかかる期間の目安
入れ歯の作り直しにかかる期間は、部分入れ歯か総入れ歯か、そして保険適用か自費診療かによって異なります。一般的に、入れ歯の作製は複数の工程を順に進めていくため、ある程度の期間が必要です。
- 部分入れ歯の場合(保険適用・自費)
- 総入れ歯の場合(保険適用・自費)
それぞれのケースについて、見ていきましょう。
部分入れ歯の場合(保険適用・自費)
部分入れ歯の作り直しには、保険診療で2週間〜1ヶ月程度、自費診療の場合は2〜3ヶ月程度を要することがあります。保険診療の場合は選べる工程が一定の範囲に限られるため、比較的短い期間で仕上がりやすい傾向です。
一方、自費診療では設計や調整工程が細かく設定されることがあり、そのぶん期間が長くなることもあります。
複数回の来院が必要になる点は共通しており、型取り、試適(仮合わせ)、噛み合わせの確認などを順に進めていく流れです。
総入れ歯の場合(保険適用・自費)
総入れ歯の作り直しに必要な期間は、保険診療の場合は2週間〜1ヶ月程度であり部分入れ歯と大きく変わりません。ただし、自費診療になると2〜6ヶ月程度と、保険診療よりも幅が出ます。
これは自費診療では患者さんの希望によって工程をより細かく分けたり、慎重に適合を見ながら進めたりすることがあり、完成までの期間に幅が生じることがあるためです。したがって治療計画を立てる際には、見通しを事前に確認しておくといいでしょう。
保険適用入れ歯の6ヶ月ルールとは?
保険適用で入れ歯を作った場合、原則として作製から6ヶ月以内に新しい入れ歯を作り直せないという決まりがあります。これは、厚生労働省が定める診療報酬ルールに基づくもので、全国どの歯科クリニックでも同じ取り扱いです。
再作製まで一定期間を設けることで治療内容の重複を防ぎ、適切な経過観察を行うための仕組みとされています。
ここでは、この保険診療における入れ歯の再作製のルールについて、以下の視点から見ていきましょう。
- 6ヶ月以内でも入れ歯の調整は可能
- 6ヶ月ルールが適用されないケース
6ヶ月以内でも入れ歯の調整は可能
作製から6ヶ月以内であっても、入れ歯の調整は保険の範囲で行えます。作り直しはできないものの、違和感がある場合には、噛み合わせや接触面の微調整を繰り返しながら改善することが可能です。調整の回数には個人差がありますが、複数回の来院が必要となる場合もあります。
入れ歯は使い始めの時期に変化が出やすいため、痛みや外れやすさを感じたら早めに相談し、無理のない状態へ整えていくことが大切です。
6ヶ月ルールが適用されないケース
原則として作り直しは作製後6ヶ月以降になりますが、例外として以下のケースではルールが適用されず、6ヶ月以内でも作り直しが可能な場合があります。
- 入れ歯が破損した
- 入れ歯の作成後に抜歯をした
- 遠隔地のため通院できなくなった
一方、紛失の場合は6ヶ月ルールの適用内となり、保険での再作製はできません。この場合は、自費診療で対応するか、6ヶ月が経過するのを待つ必要があります。
状況によって対応が分かれるため、不具合が生じた際は早めに歯科クリニックに相談することが望ましいでしょう。
入れ歯が合わなくなる主な原因
入れ歯は、一度作ればずっと同じ状態で使い続けられるものではありません。口腔内の環境は日々変化するため、時間の経過とともに入れ歯が合わなくなることもあるでしょう。
入れ歯が合わなくなる主な原因としては、以下が挙げられます。
- 歯肉が衰えた
- 噛み方に癖がある
- 入れ歯を丁寧に管理していない
- 希望や情報が正確に伝わっていない
それぞれについて、詳しく説明します。
歯肉が衰えた
虫歯や歯周病などの影響で歯肉が痩せると、入れ歯が当たる部分にすき間ができ、安定しにくくなることがあります。年齢を重ねると歯肉が自然に変化することもあり、入れ歯がずれやすくなる原因になるケースも少なくありません。
噛み方に癖がある
噛み方に偏りがあると特定の場所に負担がかかりやすくなり、その結果顎の形が変わって入れ歯が合わなくなるケースも見受けられます。
無意識の癖は気付きにくいため、入れ歯が不安定に感じるときは、早めに確認しておくと安心でしょう。
入れ歯を丁寧に管理していない
入れ歯は、毎日のセルフメンテナンスが必要です。日常の手入れが不十分な場合、入れ歯の変形や劣化につながることがあります。また、汚れが残っていると口臭や歯周病などの口腔内トラブルの原因となる可能性も否定できません。
そのため毎日のケアを適切に行い、丁寧に管理しましょう。
希望や情報が正確に伝わっていない
入れ歯は、噛み合わせや形状の微妙な違いで使い心地が変わります。作製時に希望が十分に伝わっていなかったり、把握すべき情報が共有されていなかったりすると、完成後の入れ歯が思うように合わない結果につながりかねません。
入れ歯の作製時には、十分なコミュニケーションを意識しましょう。また作製後も違和感が続くときは、どのような点に困っているかを丁寧に伝えることが重要です。
合わない入れ歯を使い続けるリスク
入れ歯が合わない状態を放置すると、日常生活に負担がかかるだけでなく、口全体の健康にも影響する可能性があります。代表的なトラブルとしては、以下が挙げられるでしょう。
- 外れやすくなる
- 吐き気や肩こりなどを引き起こす
- 歯の健康を損なう
外れやすくなる
入れ歯が合っていない状態が続くと、歯ぐきと床が密着せずに入れ歯が外れやすくなることがあります。頻繁に入れ歯が外れると位置を修正するたびに口腔内の粘膜を刺激することになり、炎症の原因になりかねません。
吐き気や肩こりなどを引き起こす
入れ歯がわずかにずれているだけでも、噛み合わせが乱れる原因になります。その結果顎や首の筋肉に負担がかかり、肩こりや頭の重さ、吐き気などの不調につながるケースも少なくありません。
口腔内のトラブルだけではなく、こうした全身の症状を引き起こす可能性がある点も理解しておきましょう。
歯の健康を損なう
部分入れ歯は、周囲の歯の支えで固定される仕組みになっています。そのため、入れ歯がわずかに合わなくなると、支台となる歯にかかる力の方向や大きさが変化し、過度な負担が集中することになりかねません。
こうした状態が続くと、歯の揺れや歯肉の炎症など、周囲の組織に影響が及ぶケースがあります。
そのため、入れ歯が合っていないと感じた場合はできるだけ速やかに歯科クリニックに相談しましょう。
何度も入れ歯が合わなくなるときの対処策
入れ歯は日々の変化に影響を受けるため、調整を重ねても安定しにくい場合があります。何度作り直しても合わない状態が続くと生活の質にも関わるため、改めて原因を整理し、適切な選択肢を検討することが大切です。
対処策としては、次のようなものが考えられます。
- 他の歯科クリニックで相談する
- 自費診療を検討する
- 入れ歯以外の方法を検討する
他の歯科クリニックで相談する
入れ歯の不調が繰り返される場合、視点を変えることで改善できる可能性があるかもしれません。設計の考え方や噛み合わせの評価は歯科医師によって異なるため、別の歯科クリニックで診察を受けることで、これまで気付かなかった要因が見つかる場合があります。
通院している歯科クリニックで悩みが解消できない状態が続く場合は、別の歯科クリニックでのセカンドオピニオンを視野に入れてみるといいでしょう。
自費診療を検討する
自費診療では、設計や使用できる素材の選択肢が広がり、より細部まで調整しながら入れ歯を作製できる傾向があります。そのため、保険診療では対応しきれなかった部分にアプローチできる可能性が期待できるかもしれません。
費用は全額自己負担にはなりますが、自分の口の状態に合わせた設計を選びやすくなるため、選択肢の一つとして検討してみるのもいいでしょう。
入れ歯以外の方法を検討する
繰り返し不具合が生じる場合、入れ歯という方法自体が合っていない可能性も否定できません。その際は、ブリッジやインプラントなど、別の治療方法が選択肢になることがあります。
これらの方法は適応条件があり、口の状態や健康状況によって向き不向きがあるため、治療前にメリットや懸念点を丁寧に相談し、自分に合った方法を見極めることが大切です。
まとめ
入れ歯の作り直しにかかる費用や期間は、保険適用か自費診療か、そして部分入れ歯か総入れ歯かによって大きく変わります。
入れ歯が合わない状態を放置すると口腔内のトラブルや全身症状につながる可能性もあるため、違和感が続く場合は早めに相談し、調整や治療方法を検討するようにしましょう。
治療の選択肢に迷ったときには、エリア別で歯科クリニックを探せるポータルサイト「ベストチョイス」を活用すると、複数のクリニックを比較しながら検討しやすくなります。自身に合った治療方法を見つけるためにも、情報収集を進めてみてはいかがでしょうか。
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