子供の歯科矯正は補助金や保険の対象?適用条件や費用を抑える方法を解説

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子供の歯並びが気になり始めたとき、矯正治療を検討する家庭は少なくありません。とはいえ、子供の歯科矯正は数十万円単位の費用がかかることも多く、家計への影響は大きいといえます。そのため「補助金や保険が使えないか」「少しでも負担を減らす方法はないか」と考える方もいるのではないでしょうか。

本記事では、子供の歯科矯正に補助金や保険が適用される条件、対象となる特定疾患、公的制度の活用方法についてわかりやすく解説します。

子供の歯科矯正に補助金は使える?

子供の歯科矯正は、見た目や歯並びの改善を目的とするケースが多く、原則として保険や補助金の対象外です。ただし、先天的な疾患など特定の条件を満たす場合には公的支援を受けられることもあります。

ここでは、次の2点について見ていきましょう。

  • 一般的な歯科矯正は自費診療
  • 子供の歯科矯正は原則として補助金は使えない

一般的な歯科矯正は自費診療

歯科矯正は多くの場合、見た目や歯並びの改善を目的とした自費診療に分類されます。そのため、健康保険の適用外となり、治療費はすべて自己負担になるのが一般的です。これは、大人だけではなく、子供の歯科矯正においても変わりありません。

そのため治療費は歯科医院ごとに設定され、治療方法や装置の種類によっても大きく異なります。同じ症例でも医院によって数十万円単位の差が出ることもあり、事前の費用確認が欠かせません。

子供の歯科矯正は原則として補助金は使えない

国や地方自治体による補助金は、原則として保険医療が対象になっています。先述したとおり、子供の歯科矯正は原則として自費診療であるため、国や自治体の補助金制度が適用されるケースはきわめて限られており、原則として使えないと考えておくとよいでしょう。

ただし、顎変形症や先天的な口唇口蓋裂などの特定疾患に該当し、厚生労働省指定の医療機関で治療を行う場合は、保険診療として公的支援を受けられる可能性があります。そのため治療前に歯科医師へ確認することが重要です。

子供の歯科矯正で補助金の対象になる特定の疾患とは?

子供の歯科矯正は、見た目の改善を目的とする場合は原則として補助金の対象外です。しかし、厚生労働省が定める特定の先天性・機能性疾患に該当する場合は、保険診療が適用され、補助金の対象になることがあります。

条件を満たせば保険診療が認められるのは、以下の3つのケースです。

  • 厚生労働大臣が定める特定疾患に起因した咬合異常
  • 前歯および小臼歯の永久歯のうち、3歯以上の萌出不全(埋伏歯開窓術を必要とする場合に限る)
  • 顎変形症(顎離断等の手術を必要とするもの)の手術前後に行う矯正治療

こうした保険適用が可能な矯正歯科治療を実施できるのは、厚生労働省が指定する施設基準を満たしている保険医療機関のみです。

なお、厚生労働省が定める主な対象疾患は60以上あります。以下の表では、その代表的なものをまとめました。

疾患名 概要
唇顎口蓋裂 唇や顎、口蓋に先天的な裂け目がある状態。出生直後からの外科・矯正治療が必要になる代表的な疾患。
トリーチャー・コリンズ症候群 顔面骨の形成不全を伴いやすく、咀嚼・発音に配慮した治療計画が必要になるケースが多い。
外胚葉異形成症 歯の形成不全・欠損を伴いがちで、咬合再建を視野に入れた矯正が検討される。
顔面非対称症 左右の顎や顔の成長に差が生じ、噛み合わせや見た目のバランスに影響する状態。
鎖骨頭蓋骨異形成 遺伝性疾患のひとつで、乳歯の脱落や永久歯の萌出遅延を伴う。過剰歯や顎の発達不正も見られるケースが多い。
ダウン症候群 顎の発達や歯列異常を伴う場合があり、機能回復や発音改善のため矯正治療を行うことがある。
6歯以上の先天性部分無歯症 多数歯の欠如により咬合・審美・発音へ機能的影響が生じ、補綴計画と連動した矯正が必要になり得る。

これらはいずれも先天性あるいは発達過程での機能異常が原因であり、審美目的とは区別されます。

参考:公益社団法人日本矯正歯科学会 矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは

子供の歯科矯正に補助金がなくても活用できる3つの公的制度

子供の歯科矯正は原則として自費診療ですが、治療内容や家庭の状況によっては公的な支援を受けられる可能性もあります。

  • 乳幼児医療費助成制度
  • 医療費控除
  • 高額療養費制度

この3つの制度について、紹介します。

乳幼児医療費助成制度

乳幼児医療費助成制度は、健康保険に加入している子供が医療機関で受けた保険診療の自己負担分を、自治体が補助する公的制度です。対象は一般的に0歳~6歳(小学校就学前)ですが、住んでいる地域によって年齢上限や所得制限、自己負担金の有無が異なります。

歯科治療も保険診療であれば助成対象に含まれますが、歯列矯正は原則として自由診療のため、通常この制度では費用補助を受けられません。ただし、唇顎口蓋裂・鎖骨頭蓋骨異形成・軟骨形成不全症など、厚生労働省が定める特定疾患に起因する咬合異常の場合は例外的に保険が適用されます。その場合、乳幼児医療費助成制度と併用して自己負担分をさらに軽減できる可能性があるため、事前に自治体の担当窓口や歯科医院に確認しておくといいでしょう。

なお、助成を受けるには事前の申請や受給者証の交付が必要で、場合によっては一部自己負担が残る場合もあります。

参考:東京都福祉局 乳幼児医療費助成制度(マル乳)

参考:大阪府 乳幼児医療費助成制度

医療費控除

医療費控除は、年間の医療費が一定額を超えた場合に、所得税の一部が還付または軽減される制度です。治療目的の歯列矯正であれば控除対象となりますが、審美目的(見た目改善)による矯正は対象外になります。

2025年10月時点では、年間の医療費が10万円を超える場合(所得200万円未満の世帯では所得の5%を超えた分)が対象です。控除対象には、矯正治療費だけでなく、治療のための通院交通費(公共交通機関分)も含まれます。治療対象が子供の場合、付き添いの保護者の交通費も対象になりますが、交通費として認められるのはバスや電車など、公共交通機関を使用した場合のみで、マイカー利用時の燃料費や駐車場代は対象外です。

控除を受けるためには、確定申告をする必要があります。そのためいったんは請求金額を全額支払い、申請後に還付される仕組みであり、治療費を支払うときに安くなるわけではない点を理解しておきましょう。なお、申告には領収書や医療費通知などが必要です。

参考:国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)

参考:国税庁 No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例

高額療養費制度

高額療養費制度は、1ヵ月あたりの医療費が年齢や所得区分ごとの上限額を超えた場合に、その超過分を払い戻す制度です。健康保険証を用いた保険診療が対象であり、自由診療の矯正治療は適用外である点は、ほかの制度と変わりありません。

利用する際は、加入している公的保険に高額医療費の支給申請書を提出する必要があります。申請期限は原則2年以内であり、消滅時効にかかっていない高額医療費は過去にさかのぼっての請求も可能です。

なお、あらかじめ医療費が高額になることが明らかな場合は、いったん支払ってからの払い戻しではなく、最初から窓口での支払いを自己負担限度額にする方法もあります。オンライン資格確認を導入している医療機関の場合は、マイナ保険証の提出と「限度額情報の表示」に同意で利用可能です。

従来の保険証やオンライン資格確認を利用していない医療機関の場合は、「限度額適用認定証」を保険証(資格確認書)と併せて医療機関などの窓口に提出することで利用できます。

参考:厚生労働省保険局 高額医療費制度を利用される皆さまへ

参考:全国健康保険協会 健康保険限度額適用認定申請書

子供の歯科矯正費用相場

子供の歯科矯正にかかる費用相場は、治療を始める時期や装置の種類、医院ごとの料金設定によって大きく異なります。一般的な小児矯正(一期治療)は、顎の成長をコントロールして永久歯が正しく並ぶよう導く段階の治療で、費用の目安は10万〜50万円前後です。

使用する装置は取り外し式の「拡大床」や「プレートタイプ」が多く、治療期間はおよそ半年~2年程度とされています。

一方、永久歯が生えそろってから行う本格的な矯正(二期治療)は、歯列と噛み合わせを整える治療で、60万〜100万円前後が一般的です。ワイヤー矯正のほか、透明なマウスピース型装置を選ぶ場合はやや費用が高くなる傾向があります。

また、通院時の調整料や保定装置(リテーナー)の費用が別途かかることもあるため、見積もり時に総額を確認しておくことが重要です。

一期治療と二期治療を継続して行う場合、全体の総額は100万〜150万円程度、場合によってはそれ以上になるケースも見られます。

基本的に子供の歯科矯正は自費診療であるため、費用相場はあくまでも目安に過ぎません。子供の歯科矯正を検討する際は複数の歯科医院でカウンセリングを受け、費用と治療方針の両面から比較検討することが望ましいでしょう。

補助金がなくても子供の歯科矯正費用を抑える3つの方法

基本的に子供の歯科矯正は自費診療であるため、補助金や公的支援が使えないケースも少なくありません。それでも、以下のような工夫をすることで、経済的な負担を軽減できる可能性があります。

  • 複数の歯科医院から見積もりを取る
  • デンタルローンや分割払いを活用して負担を軽減する
  • 早い段階から矯正を開始する

それぞれの内容について、紹介します。

複数の歯科医院から見積もりを取る

矯正治療の費用は、医院ごとの料金体系や使用する装置、診療方針によって大きく異なり、同じ症状でも数十万円単位で差が出ることも少なくありません。そのため、複数の歯科医院の治療費を調べて見積もりを取り、費用感や治療内容を確認してどこで治療するかを決めることをおすすめします。

見積もりの際は基本的な矯正装置や初診料のほかにも、検査費用や治療の経過しだいで発生する調整料、保定装置などの費用が含まれているか、想定される治療期間や見積もり以外に追加費用が発生する条件などを確認しておきましょう。

一見安価に見えるプランでも、通院ごとの費用が積み重なって総額が高くなる場合もあります。そのため「総費用で比較する」ことが大切です。

デンタルローンや分割払いを活用して負担を軽減する

まとまった費用を一度に支払うのが難しい場合は、分割払いや医療ローンの活用を検討するのもひとつの方法です。矯正治療は自費診療で治療代がかさむケースもあるため、歯科医院によってはデンタルローンやクレジットカード払い、分割払いなどを提案しているケースもあります。

ただし、ローン契約には審査があるため、世帯の収入や返済計画を踏まえ、無理のない範囲で利用することが重要です。また、ローンや分割払いには手数料や金利が発生することも理解しておきましょう。

早い段階から矯正を開始する

歯列や噛み合わせの乱れは、成長に伴って悪化する場合があります。そのため、顎の骨や歯の成長を利用して矯正できる小児期に治療を始めることで、結果的に費用を抑えられるケースも少なくありません。

小児期の一期治療の段階で顎の成長を誘導しておけば、将来的に抜歯や永久歯が生えそろった後に行う二期治療が不要になる場合もあります。治療期間が短く済む分、通院費や調整費も少なくなり、総額を下げられる可能性が期待できるかもしれません。

ただし、すべての子供に早期治療が必要なわけではないため、歯科医師による診断を受けたうえで最適な開始時期を判断することが望ましいでしょう。

まとめ

子供の歯科矯正は、ほとんどのケースで自費診療となり、補助金や公的援助を利用できる機会は限られます。特定の先天疾患や顎の形成異常に該当しない場合、原則として保険適用外の治療となるため、費用は全額自己負担が中心です。

とはいえ、早い段階で専門医に相談し、治療の必要性や方法を明確にすることで、結果的に費用を抑えられる可能性があります。

子供の歯科矯正を検討する際は、費用だけでなく、治療方針や信頼性、通院のしやすさなどを総合的に比較検討することが大切でしょう。子供の将来の歯並びや健康を考えるうえで、焦らず慎重な判断を心がけたいところです。

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ベストチョイス編集部
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