矯正治療中に滑舌が悪いと感じるのはなぜ?原因や対処法を解説
歯並びにコンプレックスがある方にとって、矯正治療は魅力的な選択肢の一つです。近年ではさまざまな矯正装置が登場しており、ライフスタイルや希望に合わせて柔軟に治療法を選べるようになりました。しかし、そんな矯正治療を受けるにあたり、「矯正中は滑舌が悪くなると聞いた」「発音しにくいって本当?」と心配な方も多いのではないでしょうか。
この記事では、矯正治療中に滑舌が悪いと感じる原因や具体的な対処法について解説しています。これから矯正治療を受けようと考えている方はもちろんのこと、現在矯正治療中の方にとっても、本記事が参考になりましたら幸いです。
矯正治療中に滑舌が悪いと感じる理由
矯正治療中に滑舌が悪いと感じる主な理由は、以下の3つです。
- 矯正装置に舌が当たるため
- 矯正装置をつけると口を動かしづらくなるため
- 矯正装置の装着に不慣れなため
理由を詳しく見ていきましょう。
矯正装置に舌が当たるため
矯正装置の種類は、一般的に広く知られているワイヤー矯正や透明のマウスピースを装着するマウスピース矯正などさまざまです。これらの装置に舌が当たると、滑舌や発音に影響が出ると考えられます。
歯の表面にワイヤー装置を装着する表側矯正では、装置そのものは滑舌にあまり影響しません。しかし、症例によっては上下の歯にゴムをかける必要があり、そのゴムが特定の子音の発音に影響を及ぼす可能性はあります。なかでも、「さ行」「た行」「ら行」などを発音しづらいと感じる方が多いようです。
歯の裏側にワイヤー装置をつける裏側矯正の場合は、装置に直接舌が当たりやすく、滑舌への影響が出やすくなります。なかでも、「さ行」「た行」「な行」「ら行」などの子音を発音しづらい方が多いです。
マウスピース矯正も、ワイヤー装置と同様に「さ行」「た行」「ら行」の発音が苦手な傾向にあります。また、マウスピースの厚み次第では、「は行」「ま行」を発音しにくい方もいるようです。
矯正装置をつけると口を動かしづらくなるため
矯正装置を装着した状態は普段よりも口を動かしづらくなるため、滑舌や発音に影響が出る可能性があります。人によっては矯正装置が粘膜に影響を及ぼし、痛みを感じたり口内炎ができたりすることも少なくありません。痛みや口内炎に舌が当たらないように自分で口や舌の動きを制限した結果、うまく発音できないといったケースにつながります。
矯正装置の装着に不慣れなため
このように、矯正装置をつけると、滑舌や発音に少なからず影響します。しかし、普段は口の中に何もつけていない状態なのですから、矯正装置の装着に不慣れな方も多いはずです。そのため、矯正装置によって発音しにくくなったり口や舌を動かしづらくなったりするのは、矯正装置に適応していく過渡期によく見られる自然な現象といえます。
言い換えれば、矯正治療を続けているうちに徐々に慣れ、矯正装置を付けたままでも自然な滑舌や発音ができるようになるでしょう。ただし、装置に慣れるまでの期間は個人差が大きく、装置の種類や装着位置、口内の状態、精神的なストレスなどが関係してきます。自分のペースで慣れていくものだと理解し、周囲と比較しないことが大切です。
矯正装置が滑舌に影響しやすい時期
矯正装置が滑舌に影響しやすい時期は、大きく分けて以下の通りです。
- 矯正開始直後から2ヶ月頃まで
- 矯正装置のメンテナンス後数日間
- 矯正装置にトラブルが生じたとき
- 歯並びのアーチ型が狭くなってきたとき
それぞれの時期に見られる特徴について解説します。
矯正開始直後から2ヶ月頃まで
矯正治療を開始した直後から2ヶ月頃までは、装置の存在に気を取られがちです。口内に異物感や違和感があることで舌の動きが無意識のうちに制限され、子音の発音が不明瞭になる可能性があります。特に裏側矯正の場合は、このような傾向が多いといえるでしょう。
ほとんどのケースでは2~3ヶ月前後で矯正装置に慣れていき、発音も改善されていきます。矯正治療を成功させられるかどうかは、この時期を乗り越えられるかどうかにかかっているといえるでしょう。
矯正装置のメンテナンス後数日間
矯正治療では、定期的なメンテナンスが欠かせません。ワイヤー矯正の場合はワイヤーの張力やゴムの位置の調整、マウスピース矯正の場合はマウスピースの交換が必要です。歯科医院で矯正装置のメンテナンスを受けると口内環境が変化するため、一時的に滑舌や発音に影響が出る可能性があります。
こうした現象は、メンテナンスのたびに起こると考えておいてください。数日経てば変化に慣れてスムーズに発音できるようになりますので、心配しすぎる必要はありません。ただし、調整後の装置が自分に合っていないと感じるときは、我慢せずに歯科医師に相談しましょう。
矯正装置にトラブルが生じたとき
矯正装置にトラブルが生じると、滑舌や発音に影響する可能性があります。たとえば、ワイヤー矯正の場合は、ブラケットが外れたりワイヤーが曲がったりといった現象が考えられるでしょう。マウスピース矯正の場合は、破損やひび割れのリスクがあります。
万が一こうしたトラブルが生じたら、すぐに歯科医師に相談してください。そのまま使用し続けると矯正装置の位置がズレたり、尖った部分が口内の粘膜を傷付けたりする恐れがあるためです。また、矯正装置のトラブルは歯の移動そのものにも影響を及ぼし、治療期間が想定より長引いてしまうケースも考えられます。
歯並びのアーチ型が狭くなってきたとき
矯正治療が進むと歯が内側に引っ込められ、歯並びのアーチ型が狭くなるのが特徴です。その過程で舌を動かすスペースも狭くなり、一時的に滑舌や発音に影響が出る場合があります。なかでも「さ行」「た行」「ら行」など、舌の動きが大きい子音を発音しづらい方が多いようです。
しかし、アーチ型が狭くなるのは、歯並びがきれいな状態に向かっている証拠といえます。アーチ型に合わせて舌も次第に適応していきますので、発音も改善されていくでしょう。ただし、あまりにも違和感が強いときは矯正装置が合っていない可能性があるため、歯科医師との相談が必要です。
矯正治療中の滑舌を良くするための対処法
矯正治療中の滑舌を良くするための対処法は、以下の4つです。
- 発音・発声トレーニングの実践
- 表情筋や舌の使い方を意識する
- 矯正用ワックスの使用(ワイヤー矯正のみ)
- チューイーの使用(マウスピース矯正のみ)
どのように進めればよいか、具体的に見ていきましょう。
発音・発声トレーニングの実践
滑舌をスムーズにするには、以下のような発音・発声トレーニングの実践が効果的です。
- 母音のみでの発声練習
- 早口言葉の練習
- 腹式呼吸を意識した発音練習
母音のみで話すには一語一語をしっかりと発音する必要があるため、口の中で音がどう響くのかを体感できるでしょう。また、腹式呼吸は発声の基本であり、おなかから意識的に声を出すことで明瞭な発音・発声ができます。
腹式呼吸が難しいと感じる場合は、仰向けに寝転んだ状態でおなかに手をあてて呼吸してみてください。おなかに空気を入れるイメージでおなかが膨らむように息を吸い込み、息を吐き出すときにおなかから空気が出て行ってへこむように意識すると、うまく腹式呼吸を行えるようになります。
矯正装置をつけた状態では「さ行」「た行」「な行」「ら行」の発音を苦手とする方が多い傾向にありますので、これらの発音を重点的に練習するのもいいでしょう。はじめはゆっくりと各行の音をきちんと発音できる状態にしてから、少しずつ早口言葉にトライするのがおすすめです。
表情筋や舌の使い方を意識する
表情筋や舌の使い方を意識することも大切です。表情筋をやわらかくしておくと、矯正装置をつけている間も口を動かしやすくなるでしょう。また、舌を使えるようにしておくためのトレーニングとしては、ガムを舌に載せて丸めてみたり、押し広げたりするのが効果的です。
あいうべ体操も取り入れてみてください。あいうべ体操とは、口を大きく開けて「あ・い・う・べ」と口を動かし、「べ」のときに舌を大きく下方に伸ばす体操のことです。「あ・い・う・べ」までの流れを1セットとし、1日30セットを目安に毎日続けるうちに、効果が期待できるでしょう。
矯正用ワックスの使用(ワイヤー矯正のみ)
ワイヤー矯正では、装置が頬や粘膜に当たって痛みや口内炎を生じる可能性があります。この状態だと無意識に舌の動きに制限がかかり、発音に影響が出てしまうでしょう。そのようなときに便利なのが、矯正用ワックスです。ワックスを装置に塗布すると装置が口内に与える刺激を少なくでき、滑舌や発音への影響も抑えられます。
ちなみに、矯正用ワックスをつけたまま眠っても問題ありません。装置による負担を少なくできれば、快適な睡眠につながるでしょう。万が一ワックスが外れて飲み込んでしまっても健康に害はないですが、食事の際には取り外すことをおすすめします。また、食後にワックスを塗布するときは、歯磨きをして口内を清潔な状態にしてから塗るようにしましょう。
チューイーの使用(マウスピース矯正のみ)
マウスピース矯正の場合は、チューイーを使用して滑舌への影響を少なくする方法もおすすめです。チューイーとは、シリコンでできたパイプ状の補助道具で、マウスピースを装着後、チューイーをガムのように噛んでマウスピースと歯を密着させる役割があります。マウスピースがしっかりと嵌まることで、スムーズな滑舌が期待できるでしょう。
ただし顎が痛くなるほどまでチューイーを噛むと、顎関節症などのリスクにつながります。また、チューイーそのものの消耗も早めてしまいますので、1回の使用は5~10分程度に留めておきましょう。
まとめ
矯正治療中に滑舌が悪いと感じるのは、装置が舌に当たることやそもそも装置に不慣れといった原因が考えられます。しかし、日数が経つうちに徐々に適応してきますので、滑舌や発音も少しずつ改善されていくでしょう。あまり心配しすぎず、「歯並びを整えるために必要な過渡期」と前向きに捉える気持ちが大切です。
滑舌を良くする対策としては、発音・発声トレーニングの実践や表情筋・舌を意識的に使うことなどが挙げられます。ワイヤー矯正なら矯正用ワックス、マウスピース矯正ならチューイーを使用するのも一手です。歯科医師と相談しながら、自分に合った方法を見つけましょう。
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