歯周病でもインプラント治療はできる？ リスクや治療後の注意点を解説

歯周病の場合インプラント治療は原則できない

歯周病が進行している状態の場合、インプラント治療は基本的に実施できません。歯周病は細菌感染によって歯ぐきや骨に炎症を引き起こす疾患であり、炎症が残ったままインプラントを埋入すると、術後に感染が拡大しやすくなるリスクがあるからです。

特に顎の骨が細菌によって吸収されている場合、インプラントを支えるだけの厚みや高さが不足し、埋入しても動揺や脱落のリスクが高まります。また、歯周病が進行している状態のままだとインプラント周囲の組織も細菌の影響を受けやすく、治癒が遅れたり、インプラント周囲炎の発症につながったりするおそれが否定できません。

こうした背景から、未治療の歯周病を抱えたままインプラント治療を進めるのは避けるのが一般的です。

歯周病治療をしてからなら可能な場合も

歯周病であっても治療を行い、口腔内の状態が落ち着いている場合にはインプラント治療が可能と判断されるケースがあります。歯周ポケットが減少し、出血や膿といった炎症所見が改善してくると、周囲の組織が健康な状態に近づき、インプラントを安定して埋入できる環境が整いやすくなるためです。

歯周病があっても、適切な治療を行い、状態が安定していればインプラント治療の選択肢が広がる可能性もあるため、自己判断せず歯科医師に相談してみるといいでしょう。

軽症ならできるケースもある

歯周病を患っていても、炎症が歯ぐきの表層に限られている、顎の骨への影響が小さいなどの軽度の症状の場合、インプラント治療が検討されることがあります。軽度であれば、歯周ポケットが浅く、骨量も大きく損なわれていないため、インプラントが骨と結合する環境が比較的保たれているためです。

ただし、軽症であっても治療前の精密検査が重要で、歯ぐきの状態や骨量が条件を満たしているかを確認する必要があります。

インプラント周囲炎のリスクが高い

歯周病の既往がある場合、細菌が原因となるインプラント周囲炎が発症しやすいとされています。インプラント周囲炎は、歯周病と同様に細菌による炎症が原因で起こり、周囲の組織が破壊されることでインプラントを支える力が弱くなる可能性が否定できません。

もともと歯周病を発症しやすい体質や生活習慣などがあると、インプラント手術後も同じように細菌の影響を受けやすく、周囲組織に炎症が再度起こる危険性が高まります。そのため、歯周病の治療を優先し、炎症をしっかり抑えておくことが欠かせません。

骨が足りないケースが多い

歯周病が進行すると、歯を支える顎の骨が徐々に吸収される傾向があります。実際に、歯周病によって骨が痩せてしまい、インプラントを埋入するための十分な高さや厚みが確保できないケースは少なくありません。

骨量が不足していると、インプラントがしっかり固定されず動揺の原因となるほか、骨と結合しにくい状態が続きやすくなります。骨の吸収が大きい場合には、骨造成などの追加処置が必要となることもあり、治療期間が延びる要因になる点にも注意が必要です。

化膿する可能性がある

口腔内に歯周病菌が残ったまま手術を行うと、術部に細菌が侵入しやすくなり、結果として化膿を起こすことがあります。化膿が進むと痛みや腫れが続き、インプラント部の治癒が遅れることもあるため、歯周病が進行している状態でのインプラント治療は避けるのが一般的です。

術後の感染は、場合によってはインプラントの撤去に至るケースもあるため、治療前に炎症や細菌のコントロールを十分に行う必要があります。

インプラントが定着しにくい

歯周病による骨の吸収や炎症が残っていると、インプラントが骨と結合しにくくなる可能性があります。インプラントは骨との結合が得られて初めて安定して機能するため、周囲組織の健康状態は治療可否の判断に大きく影響する要素です。

十分な結合が得られない場合、長期的にインプラントが安定せず、噛む力がかかったときに動揺するリスクも否定できません。このような背景から、インプラント治療に進む前に歯周病の有無や進行状態を丁寧に評価することが求められます。

歯科医院での定期的なチェックを欠かさない

歯科医院での定期的なメンテナンスは、インプラントを良好に保つうえで欠かせません。歯科医院では、プロによるクリーニング、歯ぐきの状態確認、噛み合わせのチェック、レントゲンによる骨の評価などが行われ、日頃のセルフケアでは把握しきれない変化を確認できます。

特に歯周病の既往がある場合はインプラント周囲炎が起こりやすいとされるため、早期の対処が重要です。口腔内の変化を見逃さないためにも、歯科医師の指示どおりの間隔で定期検診を受けるようにしましょう。

セルフケアを怠らない

セルフケアが不十分な状態が続くと、インプラント周囲に細菌が増え、インプラント周囲炎につながる可能性が高まります。治療後の安定を保つためにも、丁寧なセルフケアを行うことが大切です。

正しい手順でのブラッシングはもちろん、歯間ブラシやデンタルフロスなども必要に応じて使用し、口腔内の環境を良好に保てるように意識しましょう。歯科医院での定期検診では、セルフケアについてのアドバイスも受けられます。

再発させるリスクのある行為は避ける

歯周病の再発につながる生活習慣が残っていると、インプラントにも影響を及ぼすことがあります。喫煙や生活習慣病の放置などは、歯周組織の状態を悪化させる要因になりかねません。

さらに、定期検診の中断も注意したい行動のひとつです。異変があっても自覚しにくいため、通院が途切れると変化を見逃す可能性があります。普段の生活での行動や習慣を見直し、歯科医師の指示に沿って管理を継続することが、インプラントの長期的な維持につながるでしょう。

入れ歯

入れ歯（義歯）は、外科的な処置を一般的に必要としないため、歯周病でインプラントが難しいケースでも検討される選択肢のひとつです。

型取りを行ったうえで義歯を作製し、装着後に違和感があれば調整を重ねて使用します。取り外しができるためセルフケアがしやすい方法といえますが、歯ぐきの状態によっては装着時に擦れや痛みが出ることがあり、定期的なチェックや調整が欠かせません。

ブリッジ

ブリッジは、失った歯の両隣にある歯を支えとして人工歯を固定する治療法です。取り外し式の入れ歯と異なり、原則として取り外しはできず、支台となる歯を削る必要があります。

歯周病の影響でインプラントの選択が難しい場合でも、状況に応じて検討されることがありますが、支台になる歯への負担が大きくなるケースもあるため、治療前には歯ぐきや骨の状態を含めた慎重な評価が欠かせません。