インプラントは金属アレルギーでもできる?起こり得る症状や注意点を解説

金属アレルギーがある方でも、素材を選ぶことでインプラント治療を検討できる場合があります。ただし、それでも体質によってはアレルギー反応が出る可能性があるため、事前の申告や検査を含めて歯科医師と相談したうえで慎重に進めることが大切です。
この記事では、金属アレルギーとインプラント治療の関係や治療を希望する際のポイント、インプラント治療で起こり得るアレルギー症状について解説します。
金属アレルギーでもインプラント治療はできる?
インプラントは人工歯根として体内に金属を埋め込む治療のため、金属アレルギーがある方は不安を抱くことが少なくありません。しかし、適切な素材選びや事前の検査を行うことで、治療を検討できる場合もあります。
ここでは以下のポイントを踏まえながら、インプラントと金属アレルギーについて見ていきましょう。
- 金属アレルギーとインプラントの関係
- 金属アレルギーでもインプラント治療が可能な場合がある
金属アレルギーとインプラントの関係
インプラント治療では、顎の骨に金属製の人工歯根を埋め込む必要があります。そのため、金属アレルギーがある方では素材への反応に注意が必要です。
金属が唾液などの影響を受けごく微量に溶け出すと、金属イオンとして体内のタンパク質と結合し、免疫反応を引き起こすことがあります。この反応がアレルギー症状として現れることがあるため、既往歴がある場合は治療前の確認が欠かせません。
金属アレルギーでもインプラント治療が可能な場合がある
金属アレルギーがあっても、純チタンやジルコニアといった素材を選択することで治療を検討できる場合があります。
純チタンはアレルギー反応が起こりにくいとされ、幅広い症例で使用されている素材です。一方、ジルコニアインプラントは金属を含まない点が特長で、金属アレルギーを懸念する方が選ぶこともあります。ただし、どの素材が適しているかは個々の状態によって異なるため、事前の検査や歯科医師との相談が重要です。
金属アレルギーの人がインプラント治療を希望する場合のポイント
金属アレルギーがある方がインプラント治療を検討する際には、事前準備や素材選びが特に重要です。治療を安全に進めるには、次のような点を押さえておく必要があります。
- 歯科医師に申告・相談する
- 事前にパッチテストを検討する
- 純チタン製のインプラントを選択する
- ジルコニアインプラントを検討する
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
歯科医師に申告・相談する
インプラント治療を検討する際には、あらかじめ歯科医師に金属アレルギーの既往歴やこれまでに起こった症状を詳しく伝える必要があります。使用するインプラントの素材は複数あり、金属アレルギーの状況によって適した選択肢が変わるためです。
例えば過去にアクセサリーで皮膚症状が出た経験がある場合や、特定の金属で強い反応が生じた経験がある場合は、素材選びや事前検査の有無が変わることがあります。できるだけ細かい情報を歯科医師に共有することで、治療可否の判断や、治療可能となった場合の方針も立てやすくなるでしょう。
事前にパッチテストを検討する
金属アレルギーが心配な方は、治療前にパッチテストを受けて反応を確認するようにしましょう。チタンを含む複数の金属について反応の有無を調べることで、治療可能かどうかの判断や、治療素材を選ぶ際の参考になるためです。
パッチテストは皮膚科で行われることが多く、どの金属を検査の対象にするかは症状や既往歴によって異なります。また、インプラントで一般的に用いられる金属と、普段の生活で接触する金属が異なることもあるため、必要な検査内容は必ず医療機関に確認することが大切です。
純チタン製のインプラントを選択する
純チタン製のインプラントは、金属アレルギーを持つ方でも選択されるケースがある素材です。チタンは医療分野で広く利用されており、体内で安定している性質があるとされています。
純度の高いチタンを使用することで、不要な金属元素を含まないためアレルギーが起こりにくいとされていますが、完全に反応が起こらないと断定できるわけではありません。稀にチタンに対してもアレルギー反応を呈するケースもあるため、過去のアレルギー歴や検査結果を踏まえて素材を選ぶことが求められます。
治療前に素材の種類や特性を理解しておくと、より納得して治療に臨みやすくなるでしょう。
ジルコニアインプラントを検討する
ジルコニアインプラントは、金属を含まないセラミック素材で作られたインプラントです。金属アレルギーの不安が強い方が選ぶケースもあり、金属への反応が懸念される場合にひとつの選択肢となります。オールジルコニアインプラントの場合金属を使用しないため、チタンに対して反応が懸念される場合の候補となる素材です。
ただしチタンとは異なる性質を持つため、強度や適応部位については歯科医師と相談しながら判断する必要があります。
インプラントで起こり得る金属アレルギーの影響
インプラント治療では、金属素材へのアレルギー反応によって口腔内や全身にさまざまな症状が現れることがあります。起こり得る症状を事前に把握しておくと、気になる変化が生じた際に早めに歯科医師へ相談しやすくなるでしょう。
主な症状としては、次のようなものが挙げられます。
- 口内炎・口角炎
- 口腔扁平苔癬
- 掌蹠膿疱症
- 原因不明の腫れや赤み
- オッセオインテグレーションの失敗
それぞれの症状について、解説します。
口内炎・口角炎
インプラント治療後に金属に対してアレルギー反応を起こすと、インプラント周囲を含む口腔内の粘膜に刺激が生じ、口内炎や口角炎として現れることがあります。治療後しばらくしてから口腔内にしみるような感覚や軽い痛みを感じる場合、金属アレルギーによる口内炎・口角炎の可能性が視野に入ってくるでしょう。
口腔内の粘膜は刺激を受けやすいため、金属イオンに反応すると炎症が続く場合もあり、症状が繰り返されると日常生活にも影響が出るおそれもあります。
ただし、口内炎・口角炎などの口腔内の炎症は乾燥や疲労などさまざまな要因でも起こるため、必ずしもアレルギー症状であるとは限りません。しかし、インプラント治療後に同じ部位で炎症を繰り返す場合は、素材への反応も念頭に置きながら早めに歯科医師へ相談することが大切です。
口腔扁平苔癬
口腔扁平苔癬は、頬の粘膜や舌、歯ぐきなどに白い模様が現れる病変で、金属アレルギーの症状のひとつとして挙げられることがあります。痛みがない場合もありますが、刺激を受けるとしみたり、違和感が続いたりすることも少なくありません。粘膜は金属イオンに反応しやすいとされ、インプラントに限らず詰め物や被せ物などでも同様の症状が現れるケースもあります。
インプラント治療後に粘膜の色が部分的に変化したり、白い線や斑点のようなものが現れたりした場合、自己判断で様子を見るよりも一度歯科医師に状態を確認してもらうようにしましょう。早期に気づければ、必要な対応を検討しやすくなります。
掌蹠膿疱症
掌蹠膿疱症は、手のひらや足の裏に膿疱が周期的に現れる皮膚症状で、小さな水ぶくれや赤みから始まり、乾燥やひび割れを伴うことも少なくありません。発症には複数の要因が関係するとされますが、その一つとして口腔内の金属が刺激源となり、体の免疫反応に影響する可能性が示されるケースがあります。
ただし、インプラント治療後に掌蹠膿疱症様の症状が見られたとしても、必ずしも口腔内の金属に対するアレルギー反応とは限りません。皮膚症状はストレスや生活習慣、体質などさまざまな要素でも変化するためです。
しかし、皮膚の状態とインプラント治療の時期が重なるときには、素材への反応もひとつの視点として考慮されます。
原因不明の腫れや赤み
インプラント周囲に腫れや赤みが生じ、明確な感染や機械的な刺激が見つからない場合、金属アレルギーの影響が関係していることがあります。炎症が続くとインプラント周囲の組織にも負担がかかるため、腫れが引かない・繰り返すといった状態がある場合は、早めに状況を確認してもらうことが望ましいでしょう。
素材への反応を含め、複数の要因を丁寧に確認しながら治療方針を決めていく必要があります。
オッセオインテグレーションの失敗
インプラント治療では、人工歯根が骨と結びついて安定する状態が重要で、この過程は一般に「オッセオインテグレーション」と呼ばれています。治療後にインプラントが長く機能するためには、この結合がスムーズに進むことが欠かせません。
しかし、金属アレルギーの反応が強く現れている場合、周囲組織に炎症が起きやすくなり、結合が安定しにくいことがあります。炎症が長く続くと骨との密着が弱まり、インプラントがぐらつく、予定どおりに固定されないといった問題が生じるおそれが否定できません。
オッセオインテグレーションに影響する要因は複数ありますが、治療後に違和感が続く、噛んだときに不安定に感じるときはアレルギー反応である可能性も視野に入れ、早めに受診しましょう。
まとめ
インプラント治療は金属アレルギーのある方にとって慎重さが求められる治療の一つといえますが、事前の検査や素材選びを工夫することで治療を検討できるケースがあります。
金属アレルギーとインプラントの関係を正しく理解し、歯科医師と相談のうえで自身に適した治療法や素材を選択しましょう。
金属アレルギーの方がインプラント治療を検討する際には、複数の歯科医院を比較し、自分の症状や希望に合った環境を探すことも大切です。歯科医院をエリアや診療カテゴリから検索できるポータルサイト「ベストチョイス」では、インプラント治療に対応する医院などを条件に探せます。自身の希望に合う医院選びに役立ててください。
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