インビザライン(マウスピース矯正)で後悔?失敗しないための対策を解説
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インビザライン治療では「噛み合わせが悪くなった」「歯に黒い隙間ができた」「出っ歯になった」などの失敗例が存在します。失敗を防ぐためには、指定された装着時間を守るとともに、定期的な歯科検診を受けることが大切です。
本記事では、インビザライン治療でよくある失敗例や失敗しないための対策とともに、インビザライン治療によるリスクや副作用について解説します。
インビザライン治療でよくある失敗例10選
インビザライン治療とは、透明なプラスチック製のアライナー(マウスピース)を用いた歯列矯正法です。取り外しが可能で装着時も目立ちにくいため、矯正治療のイメージを大きく変えました。しかし、以下のような失敗例も少なくありません。
- 噛み合わせが悪くなった
- 歯に黒い隙間ができた
- 正中線がズレた
- 後戻りした
- 想定よりも歯を削られた
- 歯茎が下がって歯根が露出した
- 出っ歯になった
- 虫歯や歯周病になった
- 歯根が吸収された
- 仕上がりに満足できなかった
ここでは、それぞれの失敗例について解説します。
噛み合わせが悪くなった
治療中に歯が計画どおりに動かなかったり、歯科医師が噛み合わせを適切に評価せずに治療を進めたりした場合、インビザライン治療後に、噛み合わせが悪化するケースがあります。
歯列矯正は、理想の咬み合わせを目指して治療計画を立てるのが一般的です。インビザラインはメーカーと契約すれば治療を始められますが、専門的な知識や経験が必要なケースでは、治療の計画や進行に注意する必要があります。
歯に黒い隙間ができた
インビザライン治療後、歯の根元に「ブラックトライアングル」が生じることがあります。「ブラックトライアングル」とは、歯茎が下がって歯と歯の間にできる三角形の隙間のことです。
長期間重なっていた歯は、歯と歯の間の歯肉組織が失われている場合があり、歯並びが整う過程でブラックトライアングルが現れやすくなります。この隙間は、見た目の問題だけでなく、食べ物が詰まりやすくなるなどの不具合も引き起こす可能性があるものです。
治療計画の段階で、歯科医師がこのリスクを予測し、IPR(歯の側面をわずかに削る処置)などで隙間を小さくするケースもありますが、症例によっては完全に隙間を防ぐことが難しい場合もあります。
正中線がズレた
治療後に上下の前歯の中心線である正中線がズレてしまうことがあります。これは、計画された歯の動きが意図したように進まなかったり、片側の歯列だけがうまく矯正されたりした場合に起こる症例です。
マウスピースの装着時間が不足していたり、歯に正確にフィットしていなかったりすると、歯の動きに左右差が生じ、正中線のズレにつながる可能性があります。正中線のズレは、見た目のバランスが悪くなるだけでなく、噛み合わせにも影響が出るため注意が必要です。
後戻りした
インビザライン治療に限らず、歯列矯正には「後戻り」のリスクが伴います。後戻りとは、矯正治療が終了した後に、歯が元の位置に戻ろうとする動きや、噛む力による圧力で意図せずに歯が動いてしまう現象です。
インビザライン治療後は、リテーナー(保定装置)を装着しなければならないものの、着け忘れたり推奨される装着時間が守れなかったりするケースが珍しくありません。リテーナーの使用を怠ると、整った歯並びが元の状態に戻ってしまう可能性があります。
想定よりも歯を削られた
インビザライン治療では、歯をきれいに並べるためのスペースを作る目的で、歯の側面をわずかに削る処置(IPRやストリッピング、ディスキングなど)をする場合があります。
この処置では、歯の一番外側の硬い組織であるエナメル質を、通常0.2mm~0.5mm程度削りますが、歯の形が大きく変わるほど削るわけではありません。しかし、患者さんの感覚によっては「歯が小さくなった」「歯の形が変わった」と感じることがあるようです。
事前に十分な説明がないまま処置が行われると、患者さんは想定外の状況に戸惑い、不満を感じる可能性があります。
歯茎が下がって歯根が露出した
矯正治療中に過度な力がかかったり、歯を支える顎の骨が薄い部分で無理に歯を並べようとしたりすると、歯茎が下がり、歯の根っこが露出してしまう「歯肉退縮」が起こることがあります。
特に、歯が並ぶスペースが不足しているにもかかわらず非抜歯で治療を進めようとした場合、歯が顎の骨から外側にはみ出す形で並んでしまい、歯肉退縮を引き起こしかねません。口腔内の清掃が不十分で歯周病が進行した場合も、歯茎が下がる原因です。
歯肉退縮が起こると、歯が長く見えたり冷たいものがしみやすくなったりするデメリットが生じます。
出っ歯になった
歯が並ぶスペースが不足しているにもかかわらず非抜歯で治療を進めようとした場合、歯肉退縮以外にも「出っ歯」の状態になってしまうことがあります。歯をきれいに並べるには「抜歯」「歯を少しずつ削る」「歯を奥歯側に移動させる」といった方法でスペースを作るのが一般的です。
しかし、元々歯のガタガタや出っ歯の程度が強く、本来であれば抜歯が必要な症例において無理に非抜歯で歯を並べようとすると、歯列全体が前方に張り出すしかありません。その結果、治療後にかえって口元が突出した印象になってしまうのです。
マウスピースが適切にフィットしていなかったり、アタッチメントの位置や使用方法が誤っていたり装着時間が不足していたりする場合も、意図しない歯の動きが生じ、出っ歯を助長する可能性があります。
虫歯や歯周病になった
インビザライン治療中は、マウスピースを長時間装着するため、歯とマウスピースの間に食べ物のカスやプラーク(細菌の塊)が溜まりやすくなります。マウスピースの清掃や歯磨きが不十分であったり、マウスピースを装着したまま甘い飲み物を摂取したりするのは、虫歯や歯周病のリスクを高める行為です。
虫歯や歯周病が進行すると、痛みが生じるだけでなく、矯正治療を一時中断せざるを得なくなり、治療期間が長引いてしまう可能性があります。
歯根が吸収された
矯正治療の偶発症として歯の根が短くなってしまう「歯根吸収」が起こることがあります。歯列矯正で歯が動くメカニズムは、歯に適切な力を加えることにより、歯の周囲の骨にわずかな吸収と再生を促し、それに伴って歯が移動するというものです。
しかし、加える力が強すぎたり骨の再生が追いつかなかったりした場合、歯根吸収が起こるリスクがあります。特に、元々歯の根が短い場合や神経を抜いた歯、過去にダメージを受けた歯は、歯根吸収が起こりやすい傾向があるでしょう。歯根吸収が進行すると、歯の寿命が短くなる可能性があります。
仕上がりに満足できなかった
インビザライン治療が完了したものの、少し隙間が残っていたり歯のガタガタが完全には治っていなかったりするなど、最終的な仕上がりに満足できないケースがあります。これは、インビザラインがワイヤー矯正と比較して、最後の微調整が不得意な面があるためです。
治療計画を立てる際のシミュレーションが不適切であったり、患者さんの希望と歯科医師の認識にズレがあったりした場合も、満足のいく仕上がりにならない可能性があります。
インビザライン治療で失敗する原因の多くは「取り外し」
インビザライン治療の失敗を招く要因のひとつに「取り外しが自由にできる」という特徴が挙げられます。従来のワイヤー矯正は、一度装置を装着すると患者さん自身では取り外せまないため、常に矯正力が歯にかかり続ける状態が維持されていました。
一方、インビザラインは自分で簡単に取り外しができるため、以下のような「着け忘れ」が発生しやすくなります。
- 食事の後に着け忘れた
- 痛みがあったため外したまま寝てしまった
- 飲み会の後、酔っていて装着せずに寝てしまった
「取り外しができる」ようになるというのは、矯正装置の歴史上、革新的な進化です。しかし、マウスピースの装着時間が不足すると計画どおりに歯が動かず、治療期間の延長や歯が元に戻ろうとする「後戻り」の力が働くリスクが生じます。
インビザライン治療を成功させるためには、患者さん自身の強い意志と自己管理能力が不可欠です。治療計画どおりに進めるためには、歯科医師から指示された装着時間を守ることが推奨されます。
インビザライン治療で失敗しないための対策
インビザライン治療で失敗しないための対策として、以下の5つが挙げられます。
- 矯正器具の装着時間を守る
- 定期的に歯科医師の検診を受ける
- 口腔ケアを怠らない
- リテーナーの装着を怠らない
- 信頼できる歯科医院を選ぶ
ここでは、それぞれの対策について解説します。
矯正器具の装着時間を守る
インビザライン治療の効果を十分に得るためには、1日に20時間~22時間のマウスピース装着が必要です。食事や歯磨きの時間以外は常にマウスピースを装着することが推奨されています。
これは、歯へ継続的に力をかけることにより、治療計画に基づく歯の移動を目指すためです。装着時間が不足すると歯の動きが滞り、治療期間が延長するといった影響を及ぼす可能性があります。自己管理を徹底し、装着時間を守ることが治療成功の重要なポイントです。
定期的に歯科医師の検診を受ける
自分では順調に治療が進んでいると感じていても、実際にはアタッチメント(歯に接着する小さな樹脂の突起)が取れていたり、歯茎や歯の根に問題が生じ始めていたり、虫歯や歯周病が進行していたりすることは珍しくありません。歯が動くことによって起こる歯茎や歯の根のトラブル、歯列矯正を中断させる虫歯や歯周病に罹患している可能性もあるでしょう。
定期的な歯科医師の検診は、インビザライン治療中のトラブルを未然に防ぎ、早期発見・早期対応を可能にします。検診の頻度は4週間~6週間に1度が目安です。
定期的に検診を受ければ、治療の進行状況の確認、虫歯や歯周病のチェック、マウスピースのフィット感の確認などをしてもらえます。自己判断して検診を怠ると、気づかないうちにトラブルが発生しているかもしれません。安心して治療を続けるためにも、定期検診を欠かさないようにしましょう。
口腔ケアを怠らない
虫歯や歯周病を防ぎ、治療の失敗リスクを低減するためには、丁寧な口腔ケアが欠かせません。マウスピースを装着していると、唾液による自浄作用が働きにくくなり、食べ物の残りカスが歯に付着しやすくなるため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
毎食後の歯磨きはもちろん、フロスや歯間ブラシを使って歯と歯の間の清掃を徹底することが重要です。また、汚れたマウスピースを使用していると、口内の衛生状態が悪化し、口臭や感染症の原因になる可能性があります。
マウスピース自体も専用のクリーナーや中性洗剤、ぬるま湯で毎日洗浄し、清潔に保なければなりません。研磨剤入りの歯磨き粉や石鹸の使用は、マウスピースを傷つけるため避けましょう。定期的な歯科医院でのクリーニングも併せて行うと、より効果的です。
リテーナーの装着を怠らない
矯正治療によって動かされた歯は、何もしなければ元の位置に戻ろうとする性質があります。歯並びの後戻りを防ぐため、インビザライン治療終了後もリテーナー(保定装置)の装着を継続することが不可欠です。
リテーナーを歯科医師の指示どおり適切な期間使用しない場合、せっかく整った歯並びが再び乱れてしまう可能性があります。少なくとも治療期間と同じくらいの期間は、リテーナーを使用しましょう。保定期間は治療の最終段階であることを忘れず、最後まで気を抜かないことが重要です。
信頼できる歯科医院を選ぶ
インビザライン治療の成否は、担当する歯科医師の経験や技術力に影響されます。そのため、信頼できる歯科医院を選ぶことが成功への近道です。
歯の動かし方や治療計画の立案は、歯科医師の専門的な知識とスキルが求められます。インビザライン治療の症例数が豊富で、専門知識と技術を持つ歯科医師がいる医院を選ぶとよいでしょう。
インビザライン治療は矯正治療の一分野です。ワイヤー矯正も行える歯科医師であれば、マウスピース矯正だけでは対応が難しいケースや、万が一のリカバリーが必要になった際にも、柔軟な対応が期待できます。
カウンセリングの際に、治療内容の説明が丁寧か、質問に対して的確に答えてくれるかなども重要な判断材料になるでしょう。複数の歯科医院で相談し、納得できる医院を選ぶことが大切です。
インビザライン治療は万能ではない
インビザラインは、世界中で多くの実績を持つマウスピース矯正装置です。光学式口腔内スキャナーを活用し、治療シミュレーションを行うだけでなく、歯の動きの管理や噛み合わせの状態を精密に確認できる医院もあります。
長年のデータ蓄積と度重なるアップデートにより、その精度は向上し続けており、対応できる不正咬合の種類も増えてきました。しかし、現段階ではインビザラインだけですべての歯並びの問題を効率的に改善できるわけではありません。
症例によっては、ワイヤー矯正でしか対応できない複雑な噛み合わせや、ワイヤー矯正とインビザラインを併用することでより良い結果が得られるケースもあるでしょう。自身の歯並びの状態に対して、インビザライン治療が適切かどうかは、歯科医師の専門的な判断を仰ぐ必要があります。
インビザライン治療によるリスクや副作用
インビザライン治療によるリスクや副作用として、以下の2つが挙げられます。
- 発話障害
- アレルギー反応
それぞれのリスクや副作用について、以下にまとめました。
項目 | 詳細 |
---|---|
主な原因 | 口腔内にマウスピース(異物)が入ることで舌の動きが制限され、歯とマウスピースの隙間から空気が漏れる |
起こりやすい発音 | サ行・タ行 など |
想定される症状 |
|
発症頻度 | 比較的よく見られるが、多くは一時的 |
慣れるまでの目安 | 約1〜2週間で改善するケースが多い |
改善・対処法 |
|
注意点 | 慣れずに症状が長引く場合は歯科医師へ相談し、装着方法やマウスピースの状態を確認する |
項目 | 詳細 |
---|---|
主な原因 | マウスピースに使用される特殊プラスチック素材へのアレルギー |
想定される症状 |
|
発症頻度 | ごく稀 |
影響 | 継続使用で症状が悪化し、治療中断の可能性 |
初期対応 | 症状が出たら直ちにマウスピース使用を中止し、歯科医師へ連絡 |
予防策 |
|
注意点 | 医師の判断なく自己判断で再装着しないこと |
まとめ
インビザライン治療で失敗する主な原因は「取り外し」です。自分で簡単に取り外しができるため「着け忘れ」が発生しやすくなります。
インビザライン治療を成功させるためには、歯科医師から指示された装着時間の厳守が必要です。インビザライン治療は、長年のデータ蓄積と度重なるアップデートにより、対応できる不正咬合の種類も増えてきました。しかし、すべての歯並びの問題を改善できるわけではありません。
症例によっては、対応できないケースもあります。インビザライン治療が適切かどうかは、歯科医師の専門的な判断を仰ぐことが必要です。
以下で紹介するページでは、矯正治療の相談を希望する方に向けた歯科医院の一覧を、参考情報として掲載しています。情報収集の一環としてご利用ください。
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