歯列矯正に抜歯は必要?理由やメリット・デメリットを解説

歯列矯正を検討する中で、「抜歯が必要です」と言われ、不安に感じている方も多いのではないでしょうか。健康な歯を抜くことには、誰しも抵抗があるはずです。
ですが、理想のきれいな歯並びや、正しい噛み合わせを実現するためには、抜歯が欠かせない治療計画となる場合もあります。
この記事では、矯正治療で抜歯がなぜ必要なのか、その理由からメリット・デメリット、そして抜歯をしない治療の選択肢まで、分かりやすく解説します。
【この記事でわかること】
- 歯列矯正で抜歯が必要になる具体的な理由
- 抜歯のメリットとデメリットの比較
- 抜歯が必要になるかもしれない歯並び
- 抜歯をしない非抜歯矯正の選択肢
- 抜歯で後悔しないために知っておくべき重要なポイント
歯列矯正で抜歯を提案される主な3つの理由
この章のまとめ!
歯を並べるスペースの不足、噛み合わせや骨格バランスの調整、そして親知らずの影響。これらが、歯列矯正で抜歯が提案される主な理由です。
歯列矯正での抜歯は、以下の3つの理由で必要となるケースがあります。
- 歯をきれいに並べるスペースが足りない
- 上下の噛み合わせや骨格のバランスを整えたい
- 親知らずが歯並びに悪影響を与えている
それぞれ詳しく解説します。
①歯をきれいに並べるスペースが足りない
顎の大きさと歯の大きさのバランスが取れていないと、歯が並ぶための十分なスペースが確保できません。
スペースが不足したまま歯を無理に並べると、前歯が前方に突出したり、歯の根が骨から飛び出して歯茎が下がったりするリスクがあります。抜歯は、この根本的な問題を解決するために行われます。
②上下の噛み合わせや骨格のバランスを整えたい
出っ歯や受け口といった骨格的な問題は、見た目だけでなく噛み合わせにも影響します。これらの症状を改善するには、前歯を後方に大きく移動させる必要があり、そのためのスペースの確保が必要です。
抜歯によってスペースを作ることで、口元の突出感を解消し、美しい横顔の基準とされるEラインを整えることが可能になります。
③親知らずが歯並びに悪影響を与えている
親知らずは、生える向きやスペースの問題から、隣の歯を前方に押し出すことがあります。この力が歯列全体に伝わり、歯並びを乱す原因となるのです。
また、矯正治療の妨げになったり、治療後に歯並びが元に戻ってしまう「後戻り」のリスクを高めたりします。そのため、矯正治療を始める前や治療中に、親知らずの抜歯を提案されることがあります。
抜歯が必要になるかもしれない歯並びとは?
この章のまとめ!
歯が重なっている、前歯が出ているなど、いくつかの特徴的な歯並びは抜歯の可能性が高まります。ご自身の歯並びが当てはまるか、確認してみましょう。
以下は、矯正治療の際に抜歯が必要な可能性のある代表的なケースとなります。
- 歯が重なり合ってガタガタしている
- 口元がこんもりと盛り上がって見える
- 前歯が著しく前に出ている、または受け口
- 前歯がうまく閉じず、奥歯でしか噛めない(開咬)
それぞれ詳しく解説します。
歯が重なり合ってガタガタしている
顎のスペース不足により歯が正しい位置に収まらず、重なり合ったり、八重歯のように外側に飛び出している場合です。
歯をきれいに並べるためのスペースを確保する必要があるため、抜歯の可能性が非常に高い代表的な症例と言えます。抜歯で得たスペースを使い、全ての歯をアーチ内に整えます。
口元がこんもりと盛り上がって見える
歯並び自体は悪くないように見えても、口を閉じた際に口元全体が前に突き出て「口ゴボ」と表現される状態です。これは歯が顎に対して前方に傾いて生えていることが原因です。
抜歯をして前歯全体を後方に下げることで、すっきりとした口元と美しい横顔のラインを目指すことができます。
前歯が著しく前に出ている、または受け口
上の前歯が下の前歯よりも大きく前に出ている「出っ歯」や、逆に下の歯が上の歯を覆うように前に出ている「受け口」の場合です。
これらの骨格的な不調和を改善するためには、前歯を大きく後方へ移動させる必要があります。そのためのスペースを確保する目的で、抜歯が選択されることがあります。
前歯がうまく閉じず、奥歯でしか噛めない
奥歯で噛み締めても、上下の前歯の間に隙間ができてしまい、食べ物をうまく噛み切れない状態を「開咬」と言います。
この症状は、奥歯の噛み合わせに原因があることが多く、奥歯を動かしたり、歯列全体を再構築したりするために抜歯を行い、前歯が正しく噛み合うように治療を進めていきます。
矯正で抜歯をするメリット・デメリット
この章のまとめ!
抜歯には、美しい仕上がりや後戻り防止といったメリットがあります。一方で、健康な歯を失うことや、費用・期間の負担といったデメリットも存在します。
治療を検討する材料としてメリット、デメリットを比較してみましょう。
メリット | デメリット |
---|---|
歯を動かすスペースが確保でき、仕上がりが美しくなる | 健康な歯を失う(元に戻せない) |
口元の突出感が改善され、横顔(Eライン)が整う | 抜歯処置に伴う痛み、腫れ、身体的負担がある |
重度の歯並びの乱れ(叢生など)にも対応できる | 抜歯のための追加費用がかかる(保険適用外) |
治療後の歯並びが安定しやすく、後戻りのリスクを減らせる | 抜歯したスペースが埋まるまで治療期間が長くなる傾向がある |
抜歯をしない矯正治療の選択肢
この章のまとめ!
歯を削ってスペースを作ったり、奥歯を後ろに動かしたりする方法があります。抜歯をせずに歯並びを整えるための、いくつかの代替アプローチをご紹介します。
どうしても歯を抜きたくないと考える方は少なくありません。症状によっては抜歯を回避できる治療法も存在します。
以下の3つが代表的な非抜歯の方法となります。
- 歯の側面をわずかに削る(IPR)
- 奥歯を後方へ移動させる
- 歯列の幅を横に広げる(拡大床など)
それぞれ詳しく解説します。
歯の側面をわずかに削る(IPR)
IPR(Interproximal Reduction)は、歯の健康に影響を及ぼさないエナメル質の範囲内で、歯の側面をわずかに削る方法です。ヤスリのような器具で0.25mmから0.5mmほど削り、歯を動かすための小さなスペースを生み出します。
比較的軽度な歯の重なりなどで適用されることが多く、全ての歯を少しずつ小さくすることで抜歯を回避する選択肢の一つとなります。
奥歯を後方へ移動させる
歯科矯正用アンカースクリューというチタン製の小さなネジを、歯茎の骨に一時的に埋め込みます。これを固定源として歯列全体を後方へ引っ張ることで、前歯を並べるためのスペースを確保する方法です。
以前は難しかった奥歯の移動が可能になり、抜歯をせずに治療できる症例の幅が広がりました。処置は短時間で終わり、痛みもほとんどないと言われています。
歯列の幅を横に広げる(拡大床など)
特に、骨がまだ柔らかい成長期の子どもの矯正治療で用いられる方法です。拡大床(かくだいしょう)や急速拡大装置といった器具を使い、上顎の骨格そのものを側方に広げます。
歯が生える土台である顎を大きくすることで、抜歯をせずに歯をきれいに並べるスペースを確保します。大人の場合は効果が限定的ですが、子どものうちから治療を始めると改善が期待できます。
抜歯で後悔しないために知っておきたいこと
この章のまとめ!
治療後のイメージをシミュレーションで確認することが大切です。診断に不安があれば、別の医師の意見を聞くセカンドオピニオンも積極的に検討しましょう。
抜歯は元に戻せない処置のため、誰もが後悔はしたくないはずです。納得のいく治療を選択するために、以下の3つのポイントに注意しましょう。
- 担当の歯科医師と理想のイメージを共有する
- 治療後の変化をシミュレーションで確認する
- セカンドオピニオンを検討する
担当の歯科医師と理想のイメージを共有する
「歯並びをきれいにしたい」という漠然とした希望だけでは、医師との間に認識のズレが生まれる可能性があります。
「口元の突出感を解消したい」「Eラインを整えたい」など、自分がどうなりたいのか、理想のイメージを具体的に伝えましょう。
治療後の変化をシミュレーションで確認する
近年では、専門の機器を使って治療後の歯並びや口元の変化を3Dシミュレーションで可視化できる医院が増えています。抜歯をしたパターンと、しなかったパターンの両方を比較して見せてもらいましょう。
治療のゴールを確認することで、納得感が深まり、安心して治療に臨むことができます。
セカンドオピニオンを検討する
抜歯が必要という診断に対して、少しでも疑問や不安を感じたのなら、他の歯科医師の意見を聞く「セカンドオピニオン」を検討しましょう。
複数の専門家の意見を聞くことで、多角的な視点から自分の状態を理解し、最も納得できる治療法を選択できます。
まとめ
歯列矯正における抜歯は、美しい歯並びと正しい噛み合わせというゴールを達成するための有効的な治療選択肢の一つです。健康な歯を失うことへの抵抗感は当然ですが、抜歯によって得られるメリットが、デメリットを上回ることも少なくありません。
大切なのは、なぜ抜歯が必要なのかを正しく理解し、メリット・デメリットを天秤にかけ、自分自身が納得して治療法を選択することです。
【この記事の要点】
- 抜歯の主な理由は「スペース確保」「噛み合わせ調整」「親知らずの影響」の3つ。
- 抜歯には審美性向上などのメリットと、健康な歯を失うなどのデメリットがある。
- 抜歯をしない治療法も存在するが、適応できる症例は限られる。
- 後悔しないためには「医師と理想のイメージ共有」「シミュレーション確認」「セカンドオピニオン」が重要。
以下でご紹介するページでは、矯正歯科を探している方に向けた歯科医院の一覧を、参考情報として掲載しています。情報収集の一環としてご利用ください。
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