歯列矯正で親知らずの抜歯は必要?判断基準と最適なタイミングを解説

歯列矯正を検討する際、「親知らずは抜歯すべきか」という疑問は多くの方が抱きます。結論から言うと、口内の状況によりますが、将来的なリスクを考慮して抜歯が推奨されるケースが少なくありません。
しかし、必ず抜歯が必要なわけではなく、残しておけることもあります。大切なのは、ご自身の親知らずの状態を正確に把握し、専門家と相談の上で最適な選択をすることです。
【この記事でわかること】
- 歯列矯正で親知らずの抜歯が検討される3つの理由
- 抜歯の判断基準
- 親知らずを抜歯するメリットとデメリット
- 抜歯の最適なタイミングと治療の流れ
歯列矯正で親知らずの抜歯を検討する理由
この章のまとめ!
親知らずの抜歯は、歯を並べるスペースの確保や矯正後の後戻り防止のために行うことがあります。また、虫歯や歯周病のリスクを減らす予防的な側面も持っています。
歯列矯正において親知らずの抜歯がなぜ検討されるのか、理由としては以下の3つになります。
- 歯をきれいに並べるスペースを確保するため
- 矯正後の歯並びの「後戻り」を防ぐため
- 虫歯や歯周病のリスクを減らすため
それぞれ詳しく解説します。
理由①:歯をきれいに並べるスペースを確保するため
歯列矯正で奥歯を後方へ動かす「遠心移動」を行う際、親知らずが存在すると物理的な障害となり、計画通りに歯を動かせません。
特に顎が小さい方はスペースが不足しがちで、親知らずを抜くことで初めて、全ての歯を理想的な位置へ並べるためのスペースが生まれるのです。
理由②:矯正後の歯並びの「後戻り」を防ぐため
親知らずは、横向きや斜めに生えることで手前の歯を前方へ押す力を加えることがあります。この力は、時間と費用をかけて整えた歯並びが、矯正治療後に元の位置に戻ろうとする「後戻り」の大きな原因の一つです。
せっかく手に入れた美しい歯並びを長期的に維持するため、将来的なリスク要因となる親知らずを事前に取り除いておいたほうがよいでしょう。
理由③:虫歯や歯周病のリスクを減らすため
親知らずは歯列の一番奥に位置するため、歯ブラシが届きにくく、非常に磨き残しが多い歯です。矯正装置を装着すると口内の清掃性はさらに低下するため、親知らずが虫歯や歯周病になるリスクは高まります。
矯正期間中やその後に口内トラブルが発生するのを防ぐため、予防的な観点から抜歯を選択することは、口腔内全体の健康を守る上でよいかもしれません。
抜歯の判断基準|あなたの親知らずはどのタイプ?
この章のまとめ!
抜歯の判断は、親知らずの生え方やスペースの有無によって決まります。特に歯ぐきに埋まっている「埋伏歯」は、将来的なリスクが高いため注意しましょう。
ご自身の親知らずが抜歯対象になるか、気になると思います。ここでは、どのような基準で判断するのか、具体的なケースに分けてわかりやすく説明します。
抜歯が推奨される親知らず
以下の項目に一つでも当てはまるものがあれば、歯科医院で診断を受けてもよいかもしれません。あくまでも一つの検討材料として参考にしてください。
- 親知らずが横向き、または斜めに生えている
- 歯をきれいに並べるためのスペースが明らかに足りない
- 親知らず自体がすでに虫歯になっている
- 親知らずの周りの歯ぐきが、たびたび腫れたり痛んだりする
- 親知らずが原因で口臭が気になる
抜歯が不要なこともある親知らず
全ての親知らずを抜く必要があるわけではありません。上下の親知らずがまっすぐに生えて正常に噛み合っており、歯磨きも問題なく行えているのであれば、抜歯の必要はないかもしれません。
また、骨の中に完全に埋まっていて、今後問題を起こす可能性が低いと診断されたときも、抜かずに経過観察となる場合があります。最終的な判断は、レントゲンやCTでの精密検査の結果次第となります。
特に注意が必要な「埋まっている親知らず」
親知らずが歯茎に埋まっていることがあります。この親知らずを「埋伏歯(まいふくし)」と呼びます。
見た目には分からなくても、将来的にトラブルの原因となるため治療を検討してもよいかもしれません。埋伏歯への対応は、以下の3つのポイントが重要になります。
- リスクの把握
- CTによる精密検査
- 専門医での抜歯
埋伏歯は、隣の歯の根を溶かしたり、顎の骨の中に嚢胞(のうほう)という膿の袋を作ったりすることがあります。また、横向きに生えて手前の歯を押し、歯並び全体を乱す大きな原因にもなります。
下顎には太い神経が通っているため、詳細に確認できる歯科用CTでの検査が、リスクを避けるために極めて重要です。
埋伏歯の抜歯は、歯ぐきの切開などを伴う外科処置です。そのため、専門的な技術と設備を持つ大学病院や口腔外科で行うのが一般的です。
親知らずを抜歯するメリットとデメリット
この章のまとめ!
抜歯のメリットは、矯正のスムーズな進行と後戻りリスクの低減です。一方、デメリットには、抜歯に伴う痛みや腫れ、また、ごく稀にドライソケット(抜歯した穴の治りが悪くなること)などが起こる可能性もゼロではありません。
親知らずの抜歯には、良い面と注意すべき面の両方があります。
以下は抜歯するメリットとデメリットを表にまとめたものです。
メリット | デメリット |
---|---|
矯正治療が計画通りに進む | 抜歯に伴う痛み・腫れ・出血 |
矯正後の後戻りリスクを低減できる | 稀に起こる偶発症のリスク |
将来的な虫歯や歯周病を予防できる | 健康な歯を失うことへの抵抗感 |
上の表の通り、抜歯にはメリットがありますが、痛みなどのデメリットも存在します。
特に抜歯後の痛みや腫れは多くの方が心配されますが、通常は数日から1週間ほどで落ち着きます。
親知らずはいつ抜く?最適なタイミングと治療の流れ
この章のまとめ!
親知らずを抜歯する最適なタイミングは、原則として矯正治療の開始前です。これにより、抜歯後の治癒期間を確保し、スムーズに矯正治療へ移行できます。
抜歯の必要性を理解した次に気になるのは、「いつ抜くのがベストか」という点です。矯正治療全体のスケジュールを円滑に進めるため、最適なタイミングを知っておきましょう。
原則は矯正治療の開始前
最も推奨されるタイミングは、矯正装置をつける前の段階です。先に抜歯を済ませておくことで、歯ぐきの傷が治癒するための十分な期間を確保できます。
傷が癒え、歯ぐきの状態が落ち着いてから矯正装置を装着するため、治療開始後の痛みを軽減し、スムーズに歯の移動を開始することが可能です。治療計画全体の見通しが立てやすくなるという大きな利点もあります。
矯正中や矯正後に抜歯するケース
基本的には矯正前の抜歯が理想ですが、治療計画によっては矯正の途中で抜歯を行うこともあります。例えば、まず前歯の歯並びをある程度整えてから、奥歯を動かすスペースを作るために抜歯するといった手順です。
また、矯正治療に直接影響しない親知らずは、矯正がすべて完了してから、虫歯予防などの目的で抜歯を検討することも。これは歯科医師の治療方針によって異なります。
抜歯の一般的な流れ
親知らずの抜歯は、通常、以下のような流れで進められます。まず、カウンセリングとレントゲンやCTによる精密検査を行い、抜歯計画を立てます。抜歯当日は、麻酔をしっかり効かせてから処置を開始します。
身体への負担を考慮し、左右の親知らずは日にちを分けて1本ずつ抜くのが一般的です。抜歯の翌日か数日後に消毒を行い、約1週間後に抜糸をして完了となります。
まとめ
この章のまとめ!
最終的な判断は、専門家と直接相談して決めることが大切です。まずは、気軽に相談できる歯科医院を探すことから始めてみてはいかがでしょうか。
【この記事の要点】
- 親知らずの抜歯は「スペース確保」「後戻り防止」「口腔トラブル予防」の3つの理由から検討される。
- 抜歯の判断は、親知らずの生え方や向き、スペースの有無によって決まり、特に埋伏歯は注意が必要。
- 抜歯のタイミングは、原則として矯正治療の開始前が最適。
- 最終的に抜歯になるかどうかは、専門家の精密な診断後に判断される。
以下でご紹介するページでは、矯正歯科を探している方に向けた歯科医院の一覧を、参考情報として掲載しています。情報収集の一環としてご利用ください。
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