入れ歯は一本だけでも入れられる!種類別の費用やメリット・デメリットを解説

部分入れ歯は複数の歯を失った場合に限らず、一本だけの欠損にも対応できる治療法で、残っている歯に引っかけて固定する仕組みのため幅広いケースで検討されています。ただ、費用の目安や選べる種類、ほかの治療法との違いが気になることもあるでしょう。それぞれの治療の特徴をあらかじめ把握しておくことで、自分に合う方法を判断しやすくなるかもしれません。
この記事では、一本だけの入れ歯について種類別の費用、他の治療法との違い、メリット・デメリットを解説します。
一本だけ部分入れ歯を入れることは可能
歯を一本だけ失った場合に部分入れ歯で補うのは、一般的に行われている治療法といえます。部分入れ歯は残っている歯を利用して支える仕組みのため、周囲の歯が健康であれば一本からでも装着が可能です。失った歯の位置や口腔内の状態によって設計が変わるものの、多くのケースで対応できる方法とされています。
部分入れ歯は取り外し式で、金属のバネ(クラスプ)や樹脂のパーツを用いて、隣接する歯に引っかけて固定する仕組みです。そのため一本だけの欠損であっても装着できます。
また、ブリッジのように歯を削る必要がなく、外科処置も原則不要なため、比較的負担を抑えながら歯の欠損に対応できる治療法といえるでしょう。
なお、一本であっても歯の欠損を放置すると噛み合わせが乱れたり、周囲の歯が傾いたりすることもあるため、早めの対応が望ましいとされています。
部分入れ歯の種類と費用
部分入れ歯には複数の種類があり、素材や構造によって特徴や費用が異なります。治療を検討する際は、それぞれの性質を把握し、自身の口腔状態や希望に合うものを選ぶことが大切です。
ここでは代表的な4種類について、特徴と費用の目安を表にまとめました。
| 種類 | 特徴 | 費用の目安(一本) |
|---|---|---|
| レジン床義歯(保険適用) | 調整や再製作がしやすい。保険が適用されるため負担を抑えられる | 約5千〜1万5千円(3割負担) |
| 金属床義歯 | 床が薄く、違和感が少ない傾向がある。耐久性が高い。ただし金属アレルギーの可能性がある | 約30万〜60万円 |
| シリコン義歯 | 歯ぐきにフィットしやすく外れにくいが、汚れが付着しやすく強度は低い | 約10万〜50万円 |
| ノンクラスプデンチャー | 金属のバネを使用しないため見た目が自然。強度は低く調整が必要になることもある | 約8万〜30万円 |
レジン床義歯(保険適用)
レジン床義歯は、保険が適用される部分入れ歯の代表的な種類です。床部分が樹脂で作られており、比較的軽量で扱いやすい特徴があります。素材の性質上修理や調整がしやすいため、破損や違和感が生じた際にも対応しやすい点が利点といえるでしょう。
保険診療の範囲内で行われる場合、自己負担は5千〜1万5千円(3割負担)程度が一般的です。費用を抑えて治療を始めたい場合に検討しやすい治療法ですが、ほかの自費診療の義歯と比べると厚みがあり、装着時に違和感を覚えることもあります。
金属床義歯
金属床義歯は、床部分を金属で作ることで強度が高く、薄く仕上げられる義歯です。厚みが抑えられるため、装着時の違和感が少ない傾向があります。また、耐久性にも優れており、長期的に使用しやすい点が特徴といえるでしょう。
一方で、金属を使用するため金属アレルギーのリスクには注意が必要です。原則自費診療になるため費用は30万〜60万円程度と幅があり、素材や設計によって変動します。
シリコン義歯
シリコン義歯は、シリコン素材を使用しているため歯ぐきに密着しやすく、外れにくいといわれています。装着時のフィット感を重視する方に選ばれやすい種類ですが、シリコン部分に汚れが付着しやすい特性があり、こまめな手入れが欠かせません。
また、シリコンは金属やレジンと比較すると強度が高くないため、割れや変形が起こりやすいといわれています。費用は10万〜50万円程度が一般的で、通常自費診療です。
ノンクラスプデンチャー
ノンクラスプデンチャーは、金属のバネ(クラスプ)を使わず、樹脂で歯に固定する部分入れ歯です。金属を使用しないため見た目が自然で、前歯の欠損にも適している種類といえます。
一本の費用は、8万〜30万円程度です。見た目を重視する場合の選択肢として用いられることが多い傾向がありますが、強度が低く、頻繁な調整が必要になるケースもあります。
部分入れ歯以外で抜けた一本を補う方法
歯を一本失った場合に選択できる治療は、部分入れ歯だけではありません。欠損した歯の位置や口腔内の状態、費用面の希望などによって、ほかの方法が適していると判断されることもあります。
- ブリッジ
- インプラント
この2種類の方法が、部分入れ歯以外の選択肢として挙げられます。それぞれ、詳しく見ていきましょう。
ブリッジ
ブリッジは、欠損した歯の前後にある歯を支台として削り、橋を架けるように人工歯を固定する治療法です。取り外す必要がない固定式であるため、装着時の安定感が得られやすい方法といわれています。
また、保険適用となるケースでは約2万〜10万円程度で治療できることが多く、費用面で検討しやすい点も特徴です。
一方で、健康な歯を削る必要があり、支台とする歯の負担が大きくなることは理解しておく必要があります。治療期間は一般的に1〜2ヶ月程度とされており、比較的短期間で治療を進められる方法といえるでしょう。
インプラント
インプラントは、欠損した部分の顎の骨に人工歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工歯を装着する治療法です。通常は周囲の歯を削る必要がなく、健康な歯に負担がかかりにくいほか、噛み心地が自然に近いといわれ、審美的にも整いやすい方法とされています。
ただし、インプラントは原則自費診療で行われ、費用相場は一本あたり30万〜50万円程度が一般的です。また、治療には外科手術が必要で、骨が十分にない場合は補助手術が必要になるケースもあります。
治療期間は状態によって異なりますが、3ヶ月〜1年程度かかることもあるため、治療計画を立てる際には期間を確認することも大切です。
一本だけ部分入れ歯にするメリット
部分入れ歯は、一本だけ歯を失った場合でも広く選択されている治療法です。負担の少なさや治療の進めやすさなど、ほかの治療法にはない利点があるため、初めて欠損補綴を検討する場合にも取り入れやすい傾向があります。主なメリットは次のとおりです。
- 費用を抑えられることがある
- 短期間で治療を完了できる
- 外科手術や歯を削る必要がない
ここから、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
費用を抑えられることがある
部分入れ歯は保険適用で製作できる種類があり、費用を抑えたい場合でも検討しやすい治療法です。とくにレジン床義歯は多くの場合保険診療の範囲で対応できるため、自費診療の義歯よりも自己負担額は比較的少なく済みます。
保険診療では素材や構造の選択肢に制限がありますが、費用面の負担を軽くできる点はメリットといえるでしょう。
短期間で治療を完了できる
部分入れ歯は、型取りから装着までの工程がインプラントやブリッジよりも少ない傾向があり、治療期間が短めに収まりやすい方法です。特に一本だけの欠損であれば、数週間程度で装着まで進むことがあります。通院回数が多くなりにくいため、治療にかける時間的な負担を抑えやすいといえるでしょう。
ただし、口腔内の状態や調整が必要になるかどうかによって、治療期間は変動する場合があります。それでも、ほかの補綴治療と比べて治療が完了するまでの流れが短い傾向にある点はメリットといえるでしょう。
外科手術や歯を削る必要がない
部分入れ歯は着脱式の装置を用いるため、顎の骨に人工歯根を埋め込むような外科手術が不要で、周囲の歯を削る処置も通常は必要ありません。
健康な歯をできるだけ傷つけたくない場合や、外科的処置が難しいケースでも検討しやすい方法とされており、補綴治療の中でも身体的負担が少ない選択肢として位置付けられています。
一本だけ部分入れ歯にするデメリット
部分入れ歯には、デメリットも存在します。治療前に把握しておくことで、選択肢を比較しやすくなり、治療後のギャップを避けやすくなるでしょう。一本だけを部分入れ歯にする代表的なデメリットは、以下のとおりです。
- 違和感が生じることもある
- 手入れの手間がかかる
- クラスプが目立つことがある
項目ごとに、詳しく紹介します。
違和感が生じることもある
部分入れ歯は取り外し式であるため、固定式のブリッジやインプラントと比べると装着時に違和感を覚えることがあります。床部分の厚みやバネの位置によって慣れるまで時間がかかることがあり、話しにくさや噛みにくさを感じる場合もあるかもしれません。
慣れるまでの期間には個人差があるため、装着直後は多少の違和感が生じる可能性がある点を理解しておくことが大切です。
手入れの手間がかかる
部分入れ歯は、毎日の手入れが欠かせません。ブラッシングだけでは清潔に保ちにくい場合があり、専用の洗浄剤を用いたケアが必要です。
汚れを放置するとニオイや変色につながることもあるため、こまめにケアを続ける習慣が求められます。
クラスプが目立つことがある
保険適用の部分入れ歯では、金属製のクラスプの使用が一般的です。歯の位置によっては話したり笑ったりしたときにクラスプが見える場合があり、見た目に気を遣う方にとって気になる可能性が否定できません。
特に前歯に近い部位で欠損がある場合、金属部分が視界に入りやすくなることがあります。見た目の自然さを優先したい場合は、その点がデメリットになる可能性もあるでしょう。
一本のみの入れ歯に関するよくある質問
一本だけの入れ歯について、治療方法や取り扱いに関するよくある質問をまとめました。
Q.一番奥の歯も入れ歯にできる?
一番奥の歯を失った場合でも部分入れ歯は作れますが、後方に歯がないため前の歯だけで支える形になります。そのぶん支台となる前の歯に負担がかかりやすくなるため、場合によっては入れ歯をしないという選択も検討の余地があるでしょう。
なお、ブリッジは前後の歯で固定するため適用できません。どうしても一番奥の歯を補いたい場合は、インプラントが視野に入ってきます。
Q.就寝時は外すほうがよい?
部分入れ歯は、就寝前に外すことが推奨されています。装着したまま寝ると入れ歯と歯ぐきの間に汚れが溜まり、細菌が増えやすくなるためです。
外した後は、水や専用の洗浄剤につけて清潔な状態を保ちましょう。
Q.歯が抜けたままにするリスクは?
歯を抜けたまま放置すると、周囲の歯が傾いたり、噛み合わせが乱れたりすることがあります。歯列のバランスが崩れることで発音や見た目に影響が出ることもあるため、早めの対応が望ましいでしょう。
まとめ
歯を一本だけ失った場合、部分入れ歯は一般的に用いられる治療法です。費用面や治療期間、身体的な負担などの観点から取り入れやすい方法とされている一方、装着時の違和感や手入れの手間、クラスプが目立つ可能性といったデメリットもあるため、治療前に特徴を理解しておきましょう。
部分入れ歯だけでなく、ブリッジやインプラントといったほかの選択肢が適している場合もあるため、治療ごとの特徴を比較し、自身の口腔状態や希望と合う方法を検討することが重要です。
自分に合う歯科医院を探す際は、エリア別に探せる「ベストチョイス」が役立ちます。治療方法や費用の相談先を見つけるきっかけとして活用しつつ、安心して治療に進める環境を整えていきましょう。
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